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『はい、これ。』

「……え、」



彼女から渡されたものは、鍵だった。聞いてないけど、たぶんというか、絶対この部屋の鍵。確かに泊まる時はいつも彼女の家だし、僕がこの家に来る頻度も高いけれど、合鍵がどう、なんて話は出たこともなくて、目の前に差し出されたものに驚く。



『オフィスからだと、こっちの方が近いんだよね?帰るのめんどくさくなったりしたら、来てもいいし』



淡々と話す彼女に、ただただ驚いていれば、え、いらない?なんて言われて、いる、なんてそれを取れば、笑われた。



『ちなみにね、自分の家の合鍵ってのを渡すのは、祥彰が初めてです』



そう少し笑って言われた、言葉を聞いた瞬間、僕は彼女の腕を引いていて。突然の反動に、わっ、なんて驚いた声をあげて、僕の腕の中でも、なになに?なんて戸惑っているけれど。

抱きしめた彼女の肩に顎を乗せて、あんなこと考えてた自分がバカらしくなって。彼女はこんなに、僕のこと考えてくれてたのにな、なんて。

自分の中で葛藤してたものが、なくなるような気がする。彼女は僕の背中に腕をまわして、そっと撫でるように手を滑らせていて。



『どうしたの?なんかあった?』

「なんでもないよ」



そう言えば、それならいいけど、なんて。ソファの前に立ったまま抱きしめられている状態だった彼女が、抱きついたまま、ソファの上に乗って、僕の膝の上に跨って。そのまま、手を後ろに回されてぎゅっと、とされる。



『ふふ、絶対なんかあったでしょー』

「なんで」

『勘』

「勘かよ」



でも、当たりでしょ?って言う彼女に、そうだけど、と言う他なくて。理由聞かないけどね、なんて言う彼女を、少しだけ強く抱きしめて。

いつか聞いてほしい時があったら話してね、なんて言う彼女に、僕の側にいてよ、なんて言葉を彼女にかければ、彼女に同じようなことを言われた記憶を思い出して。

あの時の僕は、ずっと側にいるつもり、なんて少しかっこつけて答えた気がするけれど、その時の彼女と同じ気持ちかな、なんて、自分が同じ立場になって初めて思ったりする。



『私はずっと側にいるつもりだけどね』




そう彼女が、いつだかの僕と同じ言葉を言ってくれて。





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決断は誰のためか / sgi→←▽



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エンスイ(プロフ) - ちひろさん» コメントありがとうございます!リクエストは受け付けているのですが、今書いているメンバーでいただけたらと思っており、tmrさんは私自身も雰囲気等あまり理解できていない部分もあり難しいかもしれないです……。今後機会があれば書かせてください…! (2021年2月22日 2時) (レス) id: 275b77238f (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ - はじめまして、いつも読ませていただいてます。リクエストなんですが、tmrさんを出来ますか?出来たらよろしくお願いします。これからも頑張って下さい。 (2021年2月20日 23時) (レス) id: 192c096d22 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エンスイ | 作成日時:2021年2月17日 12時

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