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「それよりも、他に言うことはねぇのか?」
勿体ぶるように彼はそう言った。
よく画面を見ると、彼から送ったメッセージに彼も留年する旨が書かれてある。
「…………なんで?」
考えた末にでてきたのは純粋な疑問だった。そうする意味が分からないのだ。
「お前なぁ……大事な女が身内やクラスメイトから被害を受けたんだ。近くにいたいのは当たり前だろ」
「いいの……? 私なんかが……」
零の一年を奪うことになってしまっても。そういう前に唇を塞がれた。暗い部屋の中、スマホの明かりもいつの間にか消え、零の月明かりに照らされた眼光が見える。スっと細められているソレは鋭く私を貫いた。
「他でもないこの俺様がそうしてぇんだよ。お前がとやかく言う話じゃない。そもそも、俺もお前の事故ら辺、出席日数がギリギリでその後も走り回ってたら足りなくなってたんだよ」
「でも……零は姉妹校に行ってるんだから、単位は別に……」
彼は私から離れると、ベッド脇の椅子にドカッと座り、あーもうと頭を搔く。そっぽ向きながら、彼は言った。
「……嫌なのかよ」
不貞腐れたような零が年相応の顔をのぞかせる。普段は余裕綽々で隙なんて見せない人。そんな人が私の言葉でこんな姿を見せるなんて、とても可愛らしくて仕方がない。
「いいえ、とっても嬉しい」
「そーかよ」
しばらくして、抗えない睡魔と共に私は眠りにつき、朝起きたら零はいなくなっていた。
それでも、一つのメッセージが夢では無いのだと、現実なのだと私に認識させた。
《また来る》
なんてことのない、日常の会話。
それだけで、私は幸せになれるのだ。
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MAKOTO@低浮上(プロフ) - みそらーさん» ありがとうございます!遅筆ですが気長にお待ち頂けますと幸いです……。あまりお待たせしないように更新頑張りますね! (2023年1月10日 16時) (レス) id: eb19b3bcad (このIDを非表示/違反報告)
みそらー(プロフ) - 続編おめでとうございます!密かにですが、待っていた甲斐がありました。体調に気をつけて、気が向いたときにでも筆をのらせてくださいませ。応援してます!! (2023年1月10日 3時) (レス) id: 99b3032165 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:MAKOTO@低浮上 | 作者ホームページ:http
作成日時:2023年1月10日 1時