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ゆっくりと目を開ければ、目の前は白かった。しかし、それは蛍光灯だったり天井だったりカーテンだったりと白いもので溢れているからだと認識する。
慎重に視線を動かせば差し込んで来た陽の光に目が眩んだ。体は思うように動かない。口が開いても乾いているのか何も話せない。
意識はそこにあるのだと、確認できただけでも上々か。
「っ……A先輩! 起きたんですか!?」
「寧々うるさい。……おはよ、寝坊助」
「い、いまお医者さん呼んできますね……!」
目覚めてから最初にあったのが家族ではなく愛しい後輩三人であることに正直ほっとした。自分がどれだけ寝ていたのかはわからないけれど、三人の慌てようから見てそれなりの日数は意識を失っていたようだった。
検査等が終わり、お医者様からお話を聞くと私は二ヶ月ほど眠っていたらしい。通りで病院内の空調が暖房になっているのだと思った。落ち着いて外を見れば、枯葉が地面に転がっていて、秋なのだとようやく理解する。
「特に障害などは無いようですが、筋力や食欲がかなり落ちているので、リハビリはしましょう。退院後はしばらく通院する形になりますね」
「はい、分かりました」
看護師さんに車椅子を押されながら病室に戻ると後輩たちと共に母がいた。少しだけ気まづい。
「……A、おはよう」
「……おはようございます」
家族だからと遠慮しているのか、三人も緊張した様子でこちらを伺っている。いっそのこと騒いでくれた方がありがたいのに、と考えつつここは病院だと思い出す。
「貴方が目覚めたら、その間にあった話を……と思ったのだけれど、……やっぱりダメね」
「おかあ……さま……?」
「ごめんね、A。本当にごめんなさい。母親失格だわ」
急に抱きしめられたかと思うと、耳元で母の涙声が聞こえた。今までそんな母を見たことがなく、ましてや抱きしめられたことなんて記憶に一度もない。戸惑いが隠せなかった。
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MAKOTO@低浮上(プロフ) - みそらーさん» ありがとうございます!遅筆ですが気長にお待ち頂けますと幸いです……。あまりお待たせしないように更新頑張りますね! (2023年1月10日 16時) (レス) id: eb19b3bcad (このIDを非表示/違反報告)
みそらー(プロフ) - 続編おめでとうございます!密かにですが、待っていた甲斐がありました。体調に気をつけて、気が向いたときにでも筆をのらせてくださいませ。応援してます!! (2023年1月10日 3時) (レス) id: 99b3032165 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:MAKOTO@低浮上 | 作者ホームページ:http
作成日時:2023年1月10日 1時