夢幻へのプレリュード/5 ページ7
しかし、彼はちっとも気にしていないどころか本当に僕と同じクラスになれなかったことを残念がるように頬を膨らませ、口を尖らせた。そのような姿でも愛らしく見えるのはやはり彼もアイドルのたまごであるからだろうか。
「むぅ、確かに。折角話せたのに残念だなぁ…。あ、そういや名前！名前教えてよ！」
名前を教えてくれと言われるのも初めてだった。今までは入学した時から日月の娘と認識されていたので自動的に苗字のみ覚えられていたのだ。故に、下の名前を呼ばれたことはないし覚えられていたかも定かでない。
普通なのかもしれないが、唐突に名前を聞かれることが私の中では異常なことであったため少し戸惑ってしまった。けれども突然ふ、と母の言葉が脳裏で再生される。
“鳴の顔に泥を塗るようなことをしたら、どうなるか分かっているわよね”
それは呪詛の如く何度も何度も脳内で反復された。そうだ、こんなことで動揺している場合じゃない。私はただの補欠要員で、兄を演じ切ることが使命だ。兎にも角にも、いつまでも彼と話しているわけにはいかない。つい素を晒してしまいそうで怖いのだ。ここはさっさと名乗って早めに会話を終わらせるのが良いと判断し、口を開く。
「普通は其方から名乗るのが常識だが、僕は寛容だからね。許してあげるよ。僕は日月鳴。この美しい名前を忘れることはないだろうけど、以後よろしく」
「あは、ごめんごめん。おれは明星スバル！よろしくね！ね、ね、モリ〜って呼んでいい？」
…モリ〜？
聞き慣れない単語を口にした彼、明星スバルは変わらず大きな眼を輝かせてじっと見つめてくる。それが所謂ニックネームなるものだというのに気づいたのは暫く固まってからだった。初めての、ニックネーム。口元が緩みそうになるのを必死に隠した。いけない、いい加減に彼との談笑をやめなければいつまでも話し込んでしまいそうだ。
「なんだその美しくない呼び名は。普段の僕だったら許可していないけれど…うん、そうだね。今日は気分が良いから許してあげる。
それじゃあ、僕はそろそろ」
「ありがとうモリ〜！ってホントだ、もう少しで時間じゃん！惜しいけどまた話そうね、次は絶対笑わせるから！」
歯を見せて笑う彼がとても眩しくて、何故だかわからないけれど涙が溢れそうになる。僕が中に入るまで手を振り続ける彼に、つい、私が軽く振り返してしまった。少し目を見開いたあと嬉しそうに彼は笑う。それを横目に僕は自分の席へと向かうのだった。
続く (更新停止中)
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リッツ*(プロフ) - リュさん» リュちゃん…！まさかコメントいただけるなんて思ってませんでした…本当にありがとうございます！オチ等未だ決まっていないけれど頑張ります！！ (2017年7月25日 20時) (
レス) id: 5d1926a658 (このIDを非表示/違反報告)
リュ(プロフ) - リッちゃん！新作おめでとうございます。通知来たとから心臓バクバクでした笑 リッちゃんのペースで更新頑張ってください！楽しみに待っています。 (2017年7月25日 20時) (レス) id: 50f948c092 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：律 | 作者ホームページ：https://ぴゃ。
作成日時：2017年7月25日 20時
