＃ ページ19
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「騒ぎの中心にはいつも柊がいる。だが、何かが変わった。あの重力男が騒ぎを起こした時もそうだ。今回だって、今までの流れなら刺されたのは一星のほうだろうな。
音無が亡くなってからかな……」
ジュースを受け取ったAは、それをしばらく両手で握り締めていたが、やがてプルタブを開けた。
プシュッ。音が響くのと同時に、不動は本棚から一冊の漫画を取り出す。
「確かこれ好きだっつってたな？」
「はい」
ジュースを口にするAに見せたのは、島にいた時にAが彼の部屋を訪れた時に「共通点」として上がった漫画、「人類少女」。
「てめえは実は頭がキレる。今回の手口も、大方一星のアリバイを崩すためにうまく立ち回ったんだろうよ。それくらい考えられるやつが、なんで殺人なんて馬鹿な真似をしてきたのか……」
「誰も殺してませんが？」
「まあ聞けよ」
不動に対して、Aは警戒を一切解かない。油断しない。その言葉に裏があるのではないかと考える。
そんな喧嘩を売るようなAの返しも、不動は買わなかった。
「動機がわからねぇんだ」
「……」
「この漫画にもあるだろ？」
ページをめくってAに見せる。
「敵対してた奴らが手を取り合って巨悪に立ち向かう」
「……」
「何か事情があるんなら、聞いてやるぜ？」
「！」
……長い沈黙が流れた。
「……もう一つは？」
呆気に取られていたAは、ぽつりと、言葉をこぼした。
しかしそれは、普段動かしていない部分の脳を緊急で動かして呟いたような、自分の意識にはない問いだった。
それほど、先の不動の言葉がAにとって大きかった。
「あー、もう一つは俺にとってもちょっと厄介でな」
Aの核心に迫るような投げかけをしてすぐだというのに、何事もなかったかのように不動は目を逸らした。
「確かにお前は脂汗をかいて苦しんでたし、なんつーか……お前が演技してるようにも見えねえ……刺されたのが狂言だとしたら、一星が自供するわけも……」
「なんです？」
珍しく歯切れの悪い彼に訝しげに顔を顰める。
「……刺されてるように見えねえんだけど？」
「何言ってるんです？」
振り返った不動は、不動自身も何を言っているのか分からないという顔で問うた。
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