愚かで尊く儚い、皇帝の命に捧ぐ ページ7
(現在の時系列)
盛大に祝福される彼を見るのはやはりこの上なく嬉しいことで、私は自分の誕生日のように彼の特別な日を満喫していた。
彼が、みんなが、笑っている。幸せなことだ。冷たい冬の時代を経て、今こうして英智くんが笑っていられることは、最上級に尊いことであると実感する。
「英智くん、誕生日おめでとう！」
「Aちゃん……ありがとう、君は相変わらず嬉しそうに話しかけてくれるよね？」
「当たり前だよ」
この日に生まれた彼の花、フリージアの花束。
その美しさにも引けを取らない太陽みたいな笑顔で、彼は笑う。“あの頃”のように違和感とか虚無感なんて微塵もなくて、スタフェスもSSも終えた彼はどこか安心しきった表情でこの日を迎えていた。
「君が来てくれるとは思わなかったよ、僕は疑っていたのかもしれないね」
「渉に誘われたの、あなたが行かなくてどうするんですか〜って。大袈裟でしょ？」
――英智がいちばん来て欲しいと願うのは、あなたかもしれませんよ。
流石にそんなわけないだろう。英智くんはこの一年で、掛け替えのない仲間や友人を得た。その中でいちばんなんて身に余る光栄だけど、求めたりしない。誰かのいちばんになるのは難しいことだ。
そんなことないよ、と英智くんは微笑んだ。正面から見るとほんとうに、見蕩れてしまう美しさだ。
「君がこの場にいるだけで、この日を迎えられて良かったと感じるよ。渉には感謝しなくちゃ♪」
「も〜……ケーキ切り分けてきてあげる。あんずちゃんが作ったんだってね」
「あぁ、彼女は偉いよね……君みたいな素敵な先輩がいるから、立派に成長したんだろうね。僕は君を誇りに思うよ、Aちゃん」
「はは、皇帝陛下の誇りなんてありがたいなぁ？……何度でも言うよ、私は真剣だからね」
彼がこの場に存在していること。
これまでの彼に大きく関わってきたこと。
その全てに感謝しよう、英智くんのこれからの生涯にも大きな幸せが降り注ぎますように。
「お誕生日おめでとう、英智くん。生まれてきてくれてありがとう」
「ありがとう、Aちゃん……♪」
“彼自身”の尊い生命に、祝福多からんことを！
・
英智くんお誕生日おめでとう！(明けましておめでとうございます)
彼の誕生日は『セニシエンタ』追憶の時系列ではまさに冬の時代ということで、現在軸でのパーティです。
素敵なプロデュースコースでした……来年も再来年も、ずっとずっとみんなで祝おうね。
2018/01/10 更科
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作者名：更科 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年12月8日 13時
