【あんスタ】円舞する騎士と快活の姫君(3)

Schwarz・Liebe/4 ページ22

青春だ、まさに青春だ。恋する男子だ。私も好きな人にあんなこと言われてみたい。いや好きな人いないけど。

もっと赤くなるニナの、片手を握っている羽風先輩までもが、浮気しないでよと目を細めて笑う。仮にもUNDEADの二枚看板に甘い言葉を囁かれているのだ、ファンがいたら卒倒ものだろう。

一方、それを見た司くんが、何かを言おうと一歩踏み出す。けれど、それを凛月先輩が制した。代わりに前に出た凛月先輩の前に、乙狩先輩が立つ。

「……邪魔なんだけど」

「椎名に、近づかないでくれ。弱いものは俺が守る」

乙狩先輩も大体いつも通りだ。無言で数秒視線を交わした二人を見守っていると、凛月先輩は隙をついて乙狩先輩の横をすり抜ける。まるで猫みたいだ。

そして朔間先輩の前に立つと、羽風先輩の手を無理やり引き剥がして、不安そうな顔をしたニナの空いた片手を掴んだ。

「ニナ、行くよ」

えっ、と高い声を漏らすニナの手を握ったまま、凛月先輩は踵を返そうとして……その刹那、パンッとその手が弾かれた。

凛月先輩が、目を見開いて振り返る。彼の手を払いのけたのは、朔間先輩だった。

見たこともないような、恐ろしい顔をしている。遠くにいる私も息が止まりそうになるほど、緊迫した空気が場を支配した。


「『これ』は」

朔間先輩が、ニナの体を片手で引き寄せて抱きしめる。見開かれた彼の瞳が、凛月先輩を、司くんを射殺すように見た。


「＿＿＿＿我輩たち、UNDEADのものじゃ」


ぶわり、と凄まじい覇気が廊下を包みこんだ。肌が泡立って、ぞくりと身震いをする。

固まる凛月先輩に向かって薄く微笑んだ朔間先輩は、ニナの顎を軽く持ち上げて＿＿＿その頬に、舐めるようなキスを落とした。


……ああああっ！？！？

背徳的だ、背徳的！！朔間先輩に「背徳的なことやってください！」っていったら「授業中に食べる菓子……背徳的じゃろう？」って抹茶プリン渡されたときと同じぐらい背徳的だ！！！ちなみにバレて生徒指導室に呼び出されたよね！

一人興奮する私とは裏腹に、凛月先輩は驚いた表情をしてから、悔しそうに歯嚙みする。そして、まるで捨て台詞のような言葉を放った。

「っ……今日だけだから」

行くよスーちゃん、と今度こそ踵を返した凛月先輩に、放心していた司くんは慌てて頷く。って、こっち来た！

急いで逃げ出す私にその一件はまさに深い爪痕を残し、すっかり蓮巳先輩たちの記憶を攫っていってしまった。

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