勘違いから拗れる仲/3(side凛月) ページ39
ニナが完全に見えなくなると、彼女を見送っていた兄者は俺に向き直る。
「話って何。帰りたいんだけど」
本当についてない、と思いながらも、一応聞いてみる。すると、兄者は数秒の沈黙のあと、おもむろに口を開いた。
「凛月は….…椎名の嬢ちゃんのことを、好いておるのか?」
「は?」
本日二回目のは?が口から零れ落ちた。いけない、いけない。
なんで、兄者はそんなことを聞くんだろう?
もしかしたら、兄者のことだから、ニナの本性に気づいているのかもしれない。だから、ニナの本性に気づいてない(と思われている)俺に忠告しようと……?ああもう、いちいちめんどくさい!
残念ながら、俺はここで否定することは出来ない。Aとの約束を、守らなきゃいけないから。
「うん。そうだよ」
口の中に、苦い味が広がったような気がした。吐きたくない嘘を吐きたくない相手に吐くのって、辛すぎる。
「俺っていうか、knightsはみーんなあの子が好き。恋愛的な意味でね」
けれど、皆のカモフラージュも忘れない。偉いでしょ、俺。
「なに、何か文句あるの」
黙って俯いた兄者に、理由もなく苛ついた。申し訳ないけど、ここで忠告されても撤回は出来ない。これは、俺たちのプロデューサーのための作戦だ。
「……そうじゃの」
兄者は顔をあげると、俺をまっすぐ見る。俺と同じ赤い目が、射抜くように注がれて、目を逸らしてしまいたくなった。
「ならば、敵じゃな」
……は?
兄者はてっきり、賢人ぶって忠告してくると思っていたから。予想だにしない一言に、俺が「は?」と口に出さなかったことを褒めてほしい。
兄者は、悪戯っ子のように微笑んで続ける。
「実は我輩も、嬢ちゃんのことが好きなのじゃ。凛月のことも、もちろん好きじゃけど….…。こればかりは、譲れんよ」
まってよ、お兄ちゃん。
そう零さなかったのは、奇跡だと思う。だって、兄者が、あの兄者があんな女に騙されてるなんて、そんなの嘘に決まってる。
「兄者、……嘘でしょ」
兄者は答えなかった。代わりに背中を向けた兄者は、顔だけを俺に傾けて、妖艶に笑う。
「これはいわば、戦線布告じゃ。ひよっこ騎士たちには負けない、と伝えておいてくれんかの。……戦うのなら、いくら凛月でも容赦はしないぞい」
ー兄者がいなくなってからも、俺は茫然と立ち尽くしていた。
……そんな、まさか。
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紅茶が凍っちゃった - 今28話なんですけど、アスターの花言葉に信じる恋っていうのがあって死ぬかと思いました… (2022年12月30日 12時) (レス) @page28 id: 4e52f11739 (このIDを非表示/違反報告)
ミー(プロフ) - まだ途中ですが、leaderと草食べるのところで盛大に笑ってしまいましたwww最高ですもう、アメイジングさらっと言っちゃう主人公ちゃんも面白いですwww (2017年8月14日 2時) (レス) id: 9cb245a304 (このIDを非表示/違反報告)
もっちり兎(プロフ) - チベットスナギツネで検索かけてしばらく爆笑してました。面白くて、大好きです!(この小説がです!) (2017年6月12日 22時) (レス) id: e54c16753f (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 匿名さん» ご指摘、誠にありがとうございます。つきましては、お手数をおかけしますが改悪だと感じられる箇所をお教えいただけると変更しやすいので、お教えくださると幸いです。 (2017年6月10日 21時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 二次創作の裏切りはキャラの改悪につながり、原作のイメージダウンとなりうる可能性があります。なので作品のパスワード保護、または改悪部分の変更、又は作品の削除をお勧めします (2017年6月10日 19時) (レス) id: 41b9136f09 (このIDを非表示/違反報告)
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