接触/2(side凛月) ページ23
「あ、セッちゃん」
今日は良いお昼寝日和だったから、学院についてから木陰で少し寝て、それから珍しく教室に向かっていたら、廊下の向こうから歩いてくるセッちゃんが見えた。
おーい、と手を振りかけて、手前の曲がり角から出てきた影を見つける。ああ、アイツだ。あの転校生。ニナ、だっけ。
セッちゃんは、ニナを見るとすぐさま営業スマイル。寒気がするレベルの、セッちゃんらしくない穏和な笑みだ。待って、笑わせないでセッちゃん。本当、アイドルの鑑だよねぇ。
セッちゃんはニナと一、二言話すと、そのままニナが出てきた曲がり角の方へ消えていく。そのとき一瞬、俺の方に向けられた顔は死んでいた。さすがに聞こえなかったけど、確かに口元は「チョーうざい」の形に動いていた。頑張れ、セッちゃん。見てるこっちは超絶面白いから。
「……ま、そろそろ俺も動かないとねぇ」
「あ、凛月先輩っ!」
俺を見つけたニナは、ぱあっと花が咲くような笑顔でかけよってきた。女子力抜群の、可愛いらしい走り方だ。
「……ああ。おはよ〜、ニナ」
「おはようございますっ、凛月先輩。あ、寝癖ついちゃってますよぅ」
くすくす笑いながら、ニナは俺の頭に手を伸ばす。背が届かないからか、ちょっとつま先を持ち上げて。うーん、これは天然でも計算でもグッと来るねぇ。
けど、俺は触られるのが嫌いなの。
「どこ〜?触んないで、自分で直す」
「あっ……ごめんなさい、嫌ですよね」
「んーん。俺さぁ、外で寝てたから髪に土とかついちゃっててさ。ニナの手が汚れちゃうのが嫌なの、だから触んないで」
まーくんとの戦いで習得した俺の言い訳能力がこんなところで役立つなんて、過去の俺は想像しただろうか。
泣きそうになっていたニナは、一瞬で表情を明るくする。「本当ですかっ?」嘘だよ、お互い様だよねぇ。
「なら、良かったです。私、凛月先輩が大好きなので。凛月先輩にまで嫌われちゃったら、って思うと……」
と、言いかけて、ニナは顔を赤らめた。
「だっ、大好きっていうのは!先輩として、ってことで、」
うん、分かってるよ。本当に演技が上手くって、羨ましいねぇ?
「そうなの?ちょっと、残念かも」
俺はニナの手をとって、口元に近づける。
「俺はニナのこと……女の子として、大好きだけど……なーんちゃって」
彼女は、ぽかんと俺を見た。それから、また頬を染める。
「もう、冗談は止めてくださいっ」
まだだよ、まだ始まったばっかりだから。
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紅茶が凍っちゃった - 今28話なんですけど、アスターの花言葉に信じる恋っていうのがあって死ぬかと思いました… (2022年12月30日 12時) (レス) @page28 id: 4e52f11739 (このIDを非表示/違反報告)
ミー(プロフ) - まだ途中ですが、leaderと草食べるのところで盛大に笑ってしまいましたwww最高ですもう、アメイジングさらっと言っちゃう主人公ちゃんも面白いですwww (2017年8月14日 2時) (レス) id: 9cb245a304 (このIDを非表示/違反報告)
もっちり兎(プロフ) - チベットスナギツネで検索かけてしばらく爆笑してました。面白くて、大好きです!(この小説がです!) (2017年6月12日 22時) (レス) id: e54c16753f (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 匿名さん» ご指摘、誠にありがとうございます。つきましては、お手数をおかけしますが改悪だと感じられる箇所をお教えいただけると変更しやすいので、お教えくださると幸いです。 (2017年6月10日 21時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 二次創作の裏切りはキャラの改悪につながり、原作のイメージダウンとなりうる可能性があります。なので作品のパスワード保護、または改悪部分の変更、又は作品の削除をお勧めします (2017年6月10日 19時) (レス) id: 41b9136f09 (このIDを非表示/違反報告)
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