木陰の遭遇/4 ページ7
手渡されたのは、茶色い、薄っぺらい封筒。何が入ってるかわからなくて、封筒を握ったままおもむろに彼を見上げる。
何も聞いてないけれど、彼は私の意思を汲んだようですぐに答えてくれた。
「それ、クリーニング代」
「……へっ？」
「え？」
お互いの間を、謎の沈黙が支配した。クリーニング代を払うべきなのは私だし、立場は逆じゃないのか。そんな気持ちをこめて彼に目線を送るけど、見つめかえされてまたすぐ逸らしてしまう。
「なんだよ、その顔？」
上から疑問符を含んだ声が降ってきた。それに、なぜか責められているような気になってしまう。と、今度はハァ、とめんどくさそうな溜息が聞こえた。慣れ切った「ごめんなさい」の一言を、口の中で呟く。
彼は気怠にしながらも話し始めた。
「昨日、ぶつかったときによ……ジュースが溢れて、おまえの服汚しちゃっただろ。そしたら、渉とかが弁償してやれってうるせ〜から。それに、借りは作りたくね〜し？」
……そういえば。この人の服も汚しちゃったけれど、私の服も汚れてたんだ。だからこの人は、私にお金を渡すためだけにずっと私を探してたってこと？名前もわからない、助ける価値もないような私を？
ああ、そっか。なんか裏があるんだ。利子が500倍ぐらいついてるんだ。そうに違いない、じゃないと私に優しくしてくれる理由なんてない。
すぐに納得して、私は封筒を握りしめた。それから、彼の胸にそれを突きかえす。
「……えっ、と。こ、これ……うけとれない。……です」
長らく人と話していなかったから、敬語すらも上手く使えなくて。不甲斐なくて、悲しくなる。案の定、彼はぽかんとした顔になった。
「……受け取っていいんだぞ？」
「……っ」
「いや、受け取れよ」
首をぶんぶんとふる私を見て、彼はぴしゃりといった。それに一瞬怯んだけど、諦めない。
「あっ、貴方だって、昨日、服、」
「あ？……あ〜、気にしなくていーよ。お金には困ってね〜し、大した汚れでもないし」
つ〜か、と彼は紅い瞳を瞬かせる。
「俺を誰だと思ってんだよ、俺が折角の厚意で用意したものを受け取れね〜って？そっちのが失礼なんだよ、さっさと黙って受け取れ」
有無を言わさない威圧感に、勝手に首が縦に揺れた。はっとして青ざめたのもつかの間、それを見た彼はまたニッコリと笑う。
「よしよし、聞き分けが良いな〜？」
それから、彼はわしゃわしゃと私の頭を撫で始めた。
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まめだいふくもち(プロフ) - こたつさん» こたつさん、ご指摘誠にありがとうございます。漫画などでよく見る表現だったのですが、なにか事件が関連していたのですね…。勉強になりました。つきましては、その表現を修正させていただきます。コメントありがとうございました！ (2017年10月29日 15時) (
レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ - ドラム缶に東京湾というワードは某事件を連想させるので修正した方が良いのではないでしょうか？ (2017年10月29日 9時) (レス) id: ae4fce482d (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 抹茶粉さん» 抹茶粉さん、コメントありがとうございます！とてもとても嬉しいです…！私もれいさんにプロデュースされたい！という思いから書き始めたので、光栄です笑 (2017年8月2日 22時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶粉 - 零さんにプロデュースされるなんて夢見たいです…！もう始まりから胸のきゅんきゅんが鳴り止みません！笑 続き楽しみにまってます！更新頑張ってください！ (2017年7月26日 16時) (レス) id: 634a139de2 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - ベリーさん» ベリーさん〜！ご指摘ありがとうございます。修正してまいりましたのでご確認ください。そして、またこのような事態があればお知らせください。 (2017年1月14日 13時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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