木陰の遭遇/2 ページ5
遠くの方でチャイムが鳴る音が、微かに聞こえた。
帰りのホームルームはとっくに終わり、部活にも所属していない私は帰る時間なのだけど。
先ほど窓際を一人で歩いていたら、廊下を走ってきた男子の集団にぶつかって、抱えていたファイルを窓から落としてしまった。つくづく私はついてないと思う。
急いで階段をかけおり、中庭の草むらをかきわけながら散らばったプリントを拾い始める。昨夜の雨のせいか、湿った地面に落ちたプリントは濡れていて、泣きそうになった。
「何してるの？」
……と、後ろから訝しむような、高い声が聞こえてきた。振り返ると、数人の女子が不思議そうに私を見ている。
確か、同じクラスの子だ。生憎まだ名前すらも覚えてないけど、目立つ人たちだったと思う。
彼女たちは私がクラスメイトだと知ってか知らずか、「探し物？」「何探してるの？」と親切にも声をかけてくれる。……でも、他人と話すのは苦手なのだ。気持ちは嬉しいけれど、目を合わすことすら出来ない。
大丈夫だよ、と言おうとして、声が詰まる。喉が痛くなって、目尻が熱くなる。
「あ、えっと……だっ、だいじょ、ぶ、で……」
語尾が段々と小さくなっていくのに自分でも気づいて、唇を噛み締めた。
「……あ、もしかして余計なお世話だった？」
そこで、何やら勘違いをした一人が、苦笑いをしながら問う。そんなことない、ありがとう。そういいたいのに、うまく口は動かない。
ごめんね、じゃあね、と彼女たちは慌ただしく去っていった。その途端、体の力が抜けて、唇が震えだす。
気持ち悪いって、思われたかな。満足に会話も出来ないって、思われただろうな。でも仕方ない、本当のことだもん。
再びじわりとこみ上げてくる涙を、袖で乱暴に拭う。それでも、涙は止まってくれなかった。
ぽろぽろと溢れる涙を拭うのを諦めたら、口から小さな嗚咽が落ちた。誰かに見られたら恥ずかしすぎるなぁ。それ以前に、こんなことですぐ泣いてしまうだなんて。
……嫌だな、本当に。どうして私はこうなんだろう。他の皆みたいに、普通に会話して、普通に友達を作って、普通に幸せな生活を送りたかった。
そう願っても、何も変わらない。それでも、
「……変わりたい……っ」
嗚咽と一緒に、その言葉は零れ落ちた。
「＿＿＿＿じゃあ、俺が手伝ってやろうか？」
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まめだいふくもち(プロフ) - こたつさん» こたつさん、ご指摘誠にありがとうございます。漫画などでよく見る表現だったのですが、なにか事件が関連していたのですね…。勉強になりました。つきましては、その表現を修正させていただきます。コメントありがとうございました！ (2017年10月29日 15時) (
レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ - ドラム缶に東京湾というワードは某事件を連想させるので修正した方が良いのではないでしょうか？ (2017年10月29日 9時) (レス) id: ae4fce482d (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 抹茶粉さん» 抹茶粉さん、コメントありがとうございます！とてもとても嬉しいです…！私もれいさんにプロデュースされたい！という思いから書き始めたので、光栄です笑 (2017年8月2日 22時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶粉 - 零さんにプロデュースされるなんて夢見たいです…！もう始まりから胸のきゅんきゅんが鳴り止みません！笑 続き楽しみにまってます！更新頑張ってください！ (2017年7月26日 16時) (レス) id: 634a139de2 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - ベリーさん» ベリーさん〜！ご指摘ありがとうございます。修正してまいりましたのでご確認ください。そして、またこのような事態があればお知らせください。 (2017年1月14日 13時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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