【あんスタ】プルメリア・ナハトムジーク〈1〉

目と目が合う/4 ページ23

……いま、この人はなんて。

ぽかんとする私に、朔間さんは人差し指を立てて揚々と語り始める。

「俺さ、なんかよく顔が怖いって言われんだよな。そんな俺の目を30秒見れたんなら、他の奴らも楽勝になんだろ」

え、いきなりそんなの、ハードルが高すぎる。
小刻みに首を振る私に、朔間さんはにっこりと笑って首を振る。だーめ、と子供にでも言い聞かせるような、怖いぐらいに優しい口調だった。

「話すとか以前に、目が合わないと気分悪くするヤツもいんだろ。いわば初めのワンステップだから、これぐらいはクリアしね〜となぁ？」

……だめだ、断るのも勇気がいる。途中で目を逸らしたら負け、っていうけれど、死ぬわけじゃないんだし。そう思うとまだ気はラクだ。

「ん、準備出来たんならさっさと始めよ〜ぜ。はい、スタート」

宣言と同時に、朔間さんと目を合わせる。……が、私を睨む赤い目に怯んで、そのまま私は瞳を逸らした。

「……おい」

「…………」

「2秒もなかったぞ」

「……ごめん、なさ」

「まぁいいや、今の練習な。次が本番、逸らしたら俺に生ハムサラダ奢るはいスタート！」

「えっ……えっ！？」

今すごい早口でなんか言った……！？聞き直そうとしたけれど、丁度本番が始まってしまった。今度こそは、と彼の目を見る。

＿＿＿＿視界に入ってきたのは、鮮血を垂らしたような毒々しい赤色だった。揺らめく炎のごときなまめかしい瞳が、じっと私を捉えている。

恥ずかしいような、見てはいけないものをみたような不思議な気持ちになって、はやくも逸らしてしまいそうになった。……って、ダメ。あと少し、頑張って、私。

にしても本当にかっこいいなぁ。白い肌に長い睫毛、本当に私と同じ人間なのかを疑うレベルに顔が整っている。吸血鬼とかの人ならざるものって言われた方がしっくりきそう。

……待って。私がこんなまじまじと見つめながら色んなことを考えられるんなら、相手だって色々考えてるはず。

不細工だな、とか、わりと気持ち悪ぃな、とか、俺の方が目を逸らしたいわ、とか、そんな感じの……ああもう、謝り倒したい！

いやだから頑張って私。あと数秒ぐらいだから、ほら、いち、に、さん……

「〜〜〜っ！！」

「あ」

バッ、と思いっきり顔を逸らしてしまった。だってこの方法、恥ずかしすぎるし申し訳ないし、何より心臓がもたないもん……！

「ざーんねん。27秒、惜しかったな〜？」

ニヤニヤしながら、朔間さんは顔を覆う私に声をかけた。

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