目と目が合う/1 ページ20
黙ったまま、少し前を歩く仁兎さんに、ゆっくりついていく。斎宮さんとは違って歩幅が小さいから、私でもついていきやすかった。
……にしても、話さないな。
私と同じで、喋るのが苦手なのだろうか。そしたら、もしかしたら仲良くなれるかも。いやでも話しかけられないし、というかこんな美少女と仲良くなりたいだなんて烏滸がましい！
なんて考えながらぼーっとして歩いていたら、つんのめって思いっきり転んだ。びたん、という音がして、顔から床につっこむ。
……は、恥ずかしい……！
痛いのと羞恥心とで、顔あげられない。
と、頭上から鈴が鳴るような声が聞こえてきた。
「だ、だいっ……」
しかし、その声は途中で止まる。思わず顔をあげたら、口元に手をやった仁兎さんが見えた。
……やっぱり、話すのが苦手なのかな。
「こんなに、美少女なのに……」
呟きかけて、私もはっとした。やばい、口に出た。
小さな声だったけど、仁兎さんにはばっちり聞こえていたようだ。ポカンとした顔で私を見ている。なんか失礼だっただろうか、しにたい。
仁兎さんの顔は、みるみるうちに不機嫌そうになっていった。眉を寄せた姿も可愛いのだけど、何故怒っているのだろう。
すると、むっとした表情で、彼女は囁くようにいった。
「おれは、女じゃない」
囁き声でも、はっきりとした声音だった。愛らしい風貌を不機嫌さに曇らせて、彼女……否、彼はまたスタスタと歩き始める。驚き、とか、それ以前に。
……やっちゃった。
そう思っても、後の祭りだった。
「……」
す、と仁兎さんが差し出した手の先には、目的の軽音部室の扉があった。それを確認した私を見て、彼は約束は果たしたと言わんばかりに踵を返す。
お、怒ってる、よね。
それでも、お礼ぐらいはきちんと伝えなくちゃならない。いくら声が出なくても、顔が火照っても、言わなくちゃ。
「あ、あの！あ……りがと、……た」
……ところどころ、ちゃんと言えなかった気がする。そもそも、聞こえただろうか。
なんて、私が不安に押しつぶされそうになっていれば。くるり、と彼は振り向いて＿＿＿＿それから、笑った。
ふわり、まるで春の花が咲くみたいな、可愛らしい笑顔。
……そりゃ、斎宮さんも可愛がるよね。
そんなことを思いながら、軽音部室のドアノブに手をかけたときだった。
「……何してんだよ」
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まめだいふくもち(プロフ) - こたつさん» こたつさん、ご指摘誠にありがとうございます。漫画などでよく見る表現だったのですが、なにか事件が関連していたのですね…。勉強になりました。つきましては、その表現を修正させていただきます。コメントありがとうございました！ (2017年10月29日 15時) (
レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ - ドラム缶に東京湾というワードは某事件を連想させるので修正した方が良いのではないでしょうか？ (2017年10月29日 9時) (レス) id: ae4fce482d (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 抹茶粉さん» 抹茶粉さん、コメントありがとうございます！とてもとても嬉しいです…！私もれいさんにプロデュースされたい！という思いから書き始めたので、光栄です笑 (2017年8月2日 22時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶粉 - 零さんにプロデュースされるなんて夢見たいです…！もう始まりから胸のきゅんきゅんが鳴り止みません！笑 続き楽しみにまってます！更新頑張ってください！ (2017年7月26日 16時) (レス) id: 634a139de2 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - ベリーさん» ベリーさん〜！ご指摘ありがとうございます。修正してまいりましたのでご確認ください。そして、またこのような事態があればお知らせください。 (2017年1月14日 13時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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