約束/1 ページ8
次の日、放課後の軽音部室。
「……遊ぶのに疲れる？」
何言ってんだおまえ、みたいな顔した零さんが、カツサンドの袋を開封しながら聞き返してきた。ちなみにカツサンドは食べそびれたお昼らしい。
訝しげな瞳に圧されて、私は物怖じしながら頷く。「楽しくないわけじゃないんですけど」そう言ってちらりと零さんを見ると、彼は軽く相槌を打った。それを確認して、ほっとしてから私は言葉を慎重に紡ぐ。
「楽しいんですけど、体力をすごく使うんです。だから、最後には疲れがどっと……」
「……あ〜、言いたいことはわかった」
上手く言葉にならなかったけど、伝わったらしい。うんうんと頷いた零さんは、手に持っていたカツサンドにがぶりと噛み付く。
「じゃあさ、ふぉまえひひよーひふぁいへう？」
「…………ごめんなさいもう一回お願いします」
もぐもぐとカツサンドを咀嚼する零さんを待つ。数秒の沈黙の後、ごくんとそれを飲みこんだ彼は、再び口を開いた。
「お前さぁ、次の日曜日空いてる？」
「日曜日、ですか？空いてますけど……」
それがどうしたんですか、と言う前に、零さんはふふんと不敵に微笑んだ。妖艶な赤い唇に、言葉を奪われて黙り込む。
「＿＿＿＿＿じゃあ、一緒にレッスンしよ〜ぜ♪」
＿＿＿＿今週の日曜日、10時に夢ノ咲学院駅前。
今日の放課後、零さんと私はそう約束をした。日差しと朝が苦手な零さんは、あんまり早い時間には起きれないからこの時間らしい。……いやでも、そういうことは関係なくて。
「……もしかしなくてもこれ」
その三文字を口に出すのは、なんだか恥ずかしかった。家に帰っても意識がどこか遠くにあるようだった私は、そこで漸くことの重要性を理解する。
零さんとお出かけの約束をしてしまった。あの、スーパーアイドルの零さんと。
「……」
枕に顔をぼすっと落とす。足をばたばたと動かしていると、自然に顔がにやけてくるのが分かった。
男の人と出かけるのすら初めてなのに、あの零さんとお出かけなんて。緊張と不安が入り混じって、けれどそれ以上に楽しみで。
ゆいちゃんとのお出かけより楽しみなのがなんだか申し訳なくて、私はその「お出かけ」が何のためなのかまるで考えていなかった。
＿＿＿＿そんな、私の傍らで。
普段はほぼ役目を果たさない端末の画面の中、メッセージアプリの通知がちかちかと光っていた。
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萩(プロフ) - まめだいふくもちさん» まめだちふくもちさんが見てくれてるなんて(涙)。最初コメント見た時に変な声がリアルに出ましたw。ありがとうございます。もう、本当に、夢主ちゃんにお伝えください。草葉の陰から応援してるよ！…と。 (2019年8月27日 22時) (
レス) id: cfe465a6d3 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 萩さん» 萩さん、コメントありがとうございます。夢主ちゃんの味方をしてくれる方がいて夢主ちゃんも嬉しいと思います……！ここで言うのもアレですが、私も萩さんの作品を楽しみにしております。お体に気を付けて、更新頑張ってください。 (2019年8月26日 20時) (レス) id: 59bafee163 (このIDを非表示/違反報告)
萩(プロフ) - ごめんなさい、これだけ言わせてください。零さんかっけぇ。零さんの言葉ひとつひとつが重くて、夢主ちゃんにはとても大切なことなんだなと思いました。夢主ちゃん！頑張れ！私は！君の味方だぞ！(大声) 毎日この話を読んでは癒されています。これからも頑張って下さい (2019年8月25日 22時) (レス) id: cfe465a6d3 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 厘さん» コメントありがとうございます！夢主ちゃんの成長を温かく見守ってあげてください。同じ奇人Pにコメントいただけて嬉しかったです、ありがとうございます〜！ (2019年8月13日 17時) (レス) id: 59bafee163 (このIDを非表示/違反報告)
厘 - …神様ですか？いや、神様ですね。ネガティブな女の子の成長とか見るの好きですし、三奇人の人達も大好きなのでこの作品に出会えて良かったです！熱中症に気を付けてお過ごしください、応援してます。頑張ってください！！ (2019年8月12日 21時) (レス) id: 4d8a897ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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