【あんスタ】プルメリア・ナハトムジーク〈2〉

デート/3 ページ26

これも、嵐ちゃんたちのプロデュースのおかげだろうか。嬉しいけど、それよりも恥ずかしい。こういうこと、普通の人は普通にいえちゃうの？それとも、これがチャラいってこと？

……でも、そういえば零さんには何も言われなかったな。髪を切ったときもそうだったけど、変だって言われないだけマシなのかな。それとも、夏目くんがいうように容姿には無頓着なだけ？

私が悶々と考えこんでいる間に、零さんは受付けを終わらせたらしい。行こ、と私の手を引くと、人の波のなかに飛び込んだ。もみくちゃにされ、はぐれてしまいそうで必死に彼の手を握りしめる。すると、その手は力強く引かれた。

……でも、驚いたことに零さんだと分かると皆が道を開けた。まるで波が割れるかのように開けた道を堂々と進み、零さんは最前列に辿りつく。と、ステージで演奏していたメンバーと目があった彼は、あっという間にステージに引っ張りあげられた。

……と、取り残された？

茫然としている私の目の前で、零さんは渡されたギターで演奏を始める。荒々しく、噛みつくような演奏。相変わらずの爆音で何を言っているかはよく聞こえないけど、零さんの声にフロアがさらに熱狂の渦に包まれる。頭が、くらくらする。でも、零さんから目が離せない。

「朔間さん、すごいでしょ」

と、気づけば隣に羽風さんが立っていた。彼はもみくちゃになっている私に気づいたらしく、「こっちへおいで」と人の少ない隅の方へ誘導してくれる。……さっきはちょっと危ない人かと思ったけど、優しいな。

「あの人が舞台に立つだけで、観客の視線を全て奪い取っちゃう。もちろん集客効果もばっちり。うちの腐り果てた夢ノ咲学院で、限られた少人数の本物の天才」
「……羽風さんも、夢ノ咲の生徒なんですか？」
「え？「も」ってことは、Aちゃんも？え〜、偶然！これって運命じゃない？」
「う、運命ではないと思いますけど……」
「あはは、結構言うね」

フラれちゃった、と冗談めかして笑う羽風さんに何て返せば良いかわからなくて、曖昧に笑う。

「……やっぱり、Aちゃんも朔間さんに憧れてる？」
「えっ？」
「ああ、勘違いしないでね。恋愛とか、そういうの抜きにして。ほら、朔間さんってすっごい人だからさ。弟子とか言ってたし、やっぱり憧れてるのかな〜って」

そういうことなら、確かに。頷くと、羽風さんも少しだけ笑う。

「その気持ち、分かるよ。でも、あの人は眩しすぎる太陽。あの人がいるだけで、俺らみたいな周りの凡人は全員焼けつくされちゃう」

そういった羽風さんの横顔は、なんだか寂しそうだった。

デート/4→←デート/2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す