【あんスタ】プルメリア・ナハトムジーク〈2〉

勇気と乙女心/1 ページ2

夢ノ咲学院普通科の教室内は、今日も騒がしい。

耳を澄まなさなくても、最近流行りのゲームがどうだとか、隣のクラスで新しいカップルが誕生したとかなんていう話題が聞こえてくるわけだけれど、私には関係ない。

なんたって友達がいないのだから、話にも乗れないし、話しかけるほどの勇気もないのだ。

……なんて、零さんに言ったら「甘ったれんじゃね〜よ」なんて言われちゃうだろうな。

零さんのことを思い出したら、自然と頰が緩む。だめだ、教室内で一人で笑ってたら絶対変人だと思われる……！
とりあえず思い切り机に突っ伏して顔をかくしたけれど、これはこれでたまたま見られていた誰かに「なんかあいつ机に頭突きしてるんだけど」とは言われてもおかしくないな……？


「＿＿＿＿えー、そんな！約束したじゃん〜！」

と、騒めく教室内でもはっきりと通る明るい声が近くで聞こえた。

「だから、ごめんってば！バイトが入っちゃってさぁ」

「バイトなら仕方ないけど〜……。ライブだよ？」

「あたしだって行けるなら行きたいよ！」

少しだけ顔をあげると、向かい合う二人の少女の姿が見えた。確か片方は私の前の席に座っていて、色々とよくしてくれる……そう、確か「ゆい」ちゃん。もう一人はゆいちゃんとよく一緒にいるクラスメイトだ。

「分かった、じゃあ次は絶対一緒に行こうね？」

「行く！ていうか、今回のライブの感想聞かせてね！」

もちろんと頷いた彼女が頷いた瞬間、予鈴が鳴る。礼儀正しく席についたゆいちゃんと、幸か不幸か目があった。

「おはよう、佐倉さん！」

「っ、おはよう……！」

精一杯にっこり笑うと、彼女も人の良い笑みを返してくれた。これからどうしようと悩んでいれば、相手は会話を続ける。

「ねえ佐倉さん、Valkyrieってユニットしらない？」

……Valkyrie！

Valkyrieといえば、零さんの友人である宗さんにお人形みたいに綺麗な仁兎さん、それから優しいみかくんが所属するアイドルユニットだ。

そういえば、彼らのライブももうすぐだっけ。

「知ってるよ。もうすぐライブがあるよね……？」

そう言うと、突如顔を上げたゆいちゃんは私の手を握る。その勢いに驚いていると、彼女は続けた。

「そう、そうなんだよ！！結依、友達とValkyrieのライブ行く予定だったんだけど友達に予定が入っちゃって……！」


“だから佐倉さん、良かったら一緒に行かない？”


……零さんへ。私は初めて、他人に誘われました。

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