あなたがそばに居てくれるから/4 ページ46
あの二人は、確か日直の仕事とかでまだ校内に残っていたはずだ。零さんと別れると、私は急いで教室に戻った。中から、聞き慣れた二人分の声がする。思わず、飛び込んだ。
「二人とも!」
扉の先には、日直の二人だけじゃなく結依ちゃんまでいた。三人とも、急に入ってきた私に目を丸くしている。それに一瞬怯んだけど、ぐっと拳を握りしめた。
大切なことは。全部、零さんたちに教えてもらった。 だから、すうっと息を吸って口を開く。__もう、怖いからって逃げない!
「私……『話してみたかった』って言ってもらえたこと、ほっ、本当に、本当に嬉しかったから!だから、絶対、嫌なんかじゃなくて、」
顔に、熱が集まるのが分かった。きっと、緊張とか、気持ちの昂りとかのせいだ。
「私、二人と、ちゃんと仲良くなりたい!」
沈黙が、満ちる。結依ちゃんは、何が起こっているのか分からないという表情で私と二人を交互に見ていた。
でも、しばらくして。ぷっと笑った一花ちゃんが、静かに口を開く。
「……うん。これからも、仲良くしてほしい」
隣で、茉莉ちゃんも頷く。結依ちゃんは相変わらずよく分かっていないようだったけど、やがてにっこりと笑った。
*
「零さん!」
先程の木陰に戻れば、零さんが木に凭れかかっているのを見つけた。帰っていてもおかしくないと思っていたけど、待っててくれたんだ。私が呼んだことに気づいた彼は、微笑んで手をひらりと振る。駆け寄ると、何かを言う前に彼が嬉しそうに私の名を呼んだ。
「A!よぉく頑張ったな〜♪」
その直後、ぎゅうっと強く抱きしめられる。何かの、香水だろうか__鼻先いっぱいに広がる、くらくらするほど強い匂い。でも、嫌じゃない。だって、零さんの香りは安心する。……けど、力が強すぎる!
「って、なんで、まだ何も言ってないのに……!」
「はは、俺様は何でもお見通しなんだよ」
いつものように、本当か嘘か分からないことを言った彼はすっと体を話す。そうして、乱暴に私の髪を撫ぜた。
「おまえなら、できるって信じてたよ」
……そうやって、あなたはいつも私が頑張ったからだと言ってくれるけど。違います、本当はいつも、あなたがそばに居てくれるから。
心臓が、ドキドキと煩く高鳴る。ここまでくるともう、誤魔化しようがない。これは、ただの憧れなんかじゃない。何気ない言葉や仕草、ふとすれ違った瞬間の、鼻先を掠める香りでさえも胸を高鳴らす魔力になるこの気持ちの正体は。
ああ。もう、認めるしかないんだ。
私は_____
この人に、恋をしているのだと。
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萩(プロフ) - まめだいふくもちさん» まめだちふくもちさんが見てくれてるなんて(涙)。最初コメント見た時に変な声がリアルに出ましたw。ありがとうございます。もう、本当に、夢主ちゃんにお伝えください。草葉の陰から応援してるよ!…と。 (2019年8月27日 22時) (レス) id: cfe465a6d3 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 萩さん» 萩さん、コメントありがとうございます。夢主ちゃんの味方をしてくれる方がいて夢主ちゃんも嬉しいと思います……!ここで言うのもアレですが、私も萩さんの作品を楽しみにしております。お体に気を付けて、更新頑張ってください。 (2019年8月26日 20時) (レス) id: 59bafee163 (このIDを非表示/違反報告)
萩(プロフ) - ごめんなさい、これだけ言わせてください。零さんかっけぇ。零さんの言葉ひとつひとつが重くて、夢主ちゃんにはとても大切なことなんだなと思いました。夢主ちゃん!頑張れ!私は!君の味方だぞ!(大声) 毎日この話を読んでは癒されています。これからも頑張って下さい (2019年8月25日 22時) (レス) id: cfe465a6d3 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 厘さん» コメントありがとうございます!夢主ちゃんの成長を温かく見守ってあげてください。同じ奇人Pにコメントいただけて嬉しかったです、ありがとうございます〜! (2019年8月13日 17時) (レス) id: 59bafee163 (このIDを非表示/違反報告)
厘 - …神様ですか?いや、神様ですね。ネガティブな女の子の成長とか見るの好きですし、三奇人の人達も大好きなのでこの作品に出会えて良かったです!熱中症に気を付けてお過ごしください、応援してます。頑張ってください!! (2019年8月12日 21時) (レス) id: 4d8a897ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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