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ゆめうつつ ページ6

―弟者、おい、目覚ませ




ひどい色ばかりが目の前でちらついてぐるぐるする。ああ、ああ、誰か…





「真っ青だぞ、大丈夫か」


安心する声がすぐ傍でした。温かいものが俺の頬を包んで暖めた。

必死に俺は自分に話しかけた。


大丈夫、大丈夫。俺は大丈夫。



ああ、
ようやく焦点が落ち着き目の前が見えるようになってきた。


「あ…兄者、おはよ」


そこにはちゃんと愛しい人がいて、
ぶっきらぼうに優しい声を聞かせてくれる。


「…おはよ」


心配そうに覗き込む兄者を見上げた。
無意識につかんでいたんだろう、
兄者の左手が俺の右手を握りしめていた。
俺は少し笑って言った。


「ごめん兄者ちょっと痛い」

「あ、ごめ」


慌てて離そうとする兄者の手を逃げないように、今度はするりと俺が握った。


「離さなくていいから、ね」


兄者は海のような目をすっと逸らした。
でもこれは避けているんじゃない。
俺だけが知っている照れ隠しのサインだ。


「ん、」


軽く食んだ兄者の唇は薄くて、柔らかい。
そして、どこか甘く感じる。
俺が煙草を吸うからだろうか。
下唇を噛んで開くよう促すと、兄者は緩慢に口を開いて、
俺はすぐさま温かく濡れた咥内へと舌を滑り込ませた。
触れ合う舌がざらついて、
ちりり、と電気が走った。


気持ちがいい、高揚する。
目をぎゅっと瞑って俺のキスを受け止める兄者が可愛くてしかたない。



ーーー


でも、

俺と同じようには彼は感じないだろう、

彼と同じようには俺は感じられないだろう。

それでも俺は兄者を求め、兄者は俺を求めてくれる。

それに勝ることとはなんだろう?

彼に触れることこそが「生」だと感じる。

彼に流れる青い血こそが「命」だと、今ならそう思うのだ。

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作者名:榎本 | 作成日時:2018年8月13日 23時

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