▼ ページ1
.
「ほんとはもっと砕けた感じで話したいんやけどな。あんま無理強いはせんとくわ」
『砕けた感じですか?』
「うん。カティちゃん、育ち良さそうやもんなぁ」
『……そう見えますか?』
「そりゃあもう、言葉遣いとか仕草とか? 服とかも、見るからに高そうやし」
女の子の服って、あんまり詳しくないんやけどな。
カティ――名を聞かれて咄嗟にそう答えた――と呼ばれた私は曖昧に笑って、否定も肯定もしないでおいた。確かに私が生まれ育った家は、一般に"普通"と呼ばれる線のかなり上をいく家だったのは間違いない。
「でもあれやな、そんな子が一人で出歩くもんなんやな。家の人心配してへんかった?」
家の人、と言われて真っ先に思い浮かんだのは、送り出してくれたエーミール様で。
他ならぬ彼が行ってこいと
――と答えようとした矢先に、栗色の髪のお堅い従者の顔がちらついた。
そういえば、彼女――ユリアには黙って出てきてしまったな。
身内、というならば彼女だ。もしバレていたら、お説教の一つくらいは頂戴するかもしれない。
『……まぁ、少しくらい怒られても平気です』
「あれ、カティちゃんって、見かけによらずやんちゃっ子?」
『ふふ、どうでしょうね』
「ええやんええやん。じゃあ今日はうんと楽しまんとな!」
元から持っていた荷物を持ち直して、シャオロン様は行き先を悩み始める。
そのおかげでふと歩みが止まった時、今まで気にしないように努めていたものが一気に感じられた。
周りの人間からの、視線だ。
.
474人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
江之子(えのこ)(プロフ) - ささん» 初めまして、コメントありがとうございます。最新話のみならず読み返しまでしていただけるとは…。どうぞ、これからも長々とこの作品をご愛顧してもらえたらと思います!応援感謝です。 (2017年6月6日 16時) (レス) id: d4b2bfad59 (このIDを非表示/違反報告)
さ(プロフ) - 初めまして。えのこ様のお話が大好きです。最新話を追いつつ初めから読み直しては楽しませてもらっています。これからも応援しております! (2017年6月6日 15時) (レス) id: 91a8ff52f5 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - ahirudokuro112さん» コメントありがとうございます。毎日気にかけてくださるほど印象を残せたこと、一書き手としては嬉しいばかりです。それをこうして文字にして伝えてくださったことをとてもありがたく思います!今度とも、どうぞよろしくお願いします。 (2017年6月4日 0時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
ahirudokuro112(プロフ) - 初めてコメントさせてもらいます。いつもとても楽しく読ませて貰ってます。気づけば毎日朝と夜に更新されてないかチェックするのが日課になってます笑。ぜひこの気持ちをお伝えできたらとコメントさせていただきました。 (2017年6月3日 23時) (レス) id: f8fb3df520 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - 井戸らさん» コメントありがとうございます。私の場合、気が付いたらこんな文体になってまして、くどいかな…とドキドキしながら書いてる面があるのですが…。それを褒めていただけるのは何より嬉しいです。今後もお楽しみに! (2017年5月27日 23時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:江之子 | 作成日時:2017年5月22日 1時