22#前兆 ページ20
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自室の中からでも、城の門辺りが騒がしくなったのが分かった。
どうやら、任務を終えたらしい総統と幹部がたが帰還なさったようだ。
エーミール様やオスマン様、その他総統たちの留守を守っていた幹部がたも出迎えに向かったと思われる。
今日も仕事であったなら、エーミール様について出迎えに参加したかったが。
掠り傷一つ、とは言わないが、大きな怪我はしていないことを願う。
いつか機会があれば、今日のことを誰かに聞いてみるのもありか。
そんなことを考えながら、読み途中の本に目を戻した。
『……』
一度気が逸れたからか、文字列を追っても内容が頭に入ってこなくなってしまった。
これは駄目だな、と潔く諦めて私は本を閉じる。少し行儀は悪いが、ベッド脇に本を放って自身も柔らかいそこに倒れ込んだ。
宣言通り、正午を少し過ぎた頃に様子を見に来たユリアは、やっぱり表情は硬かったものの、概ねいつも通りの態度だった。
とはいえ彼女も仕事中。二、三言を交わしたのみで、すぐに去っていってしまった。
どちらかというと、昨日の今日で上手く笑えた自信のない私の方が重症で、その辺が申し訳なかったが。
――とそんなこんなで、結局エーミール様が夕飯を知らせる時間まで、毛布もかけずに眠りこけてしまっていた私だった。
――――……
――……
その夜、前触れなく訪れた豪雨は雷まで伴って数日続き、真夜中の窓を強く打っていた。
そして当時の私には知る由もなかったことだが――。
この国から遠く離れたどこかの地、大きな川が氾濫するという事件が騒がれたらしい。
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江之子(えのこ)(プロフ) - ささん» 初めまして、コメントありがとうございます。最新話のみならず読み返しまでしていただけるとは…。どうぞ、これからも長々とこの作品をご愛顧してもらえたらと思います!応援感謝です。 (2017年6月6日 16時) (レス) id: d4b2bfad59 (このIDを非表示/違反報告)
さ(プロフ) - 初めまして。えのこ様のお話が大好きです。最新話を追いつつ初めから読み直しては楽しませてもらっています。これからも応援しております! (2017年6月6日 15時) (レス) id: 91a8ff52f5 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - ahirudokuro112さん» コメントありがとうございます。毎日気にかけてくださるほど印象を残せたこと、一書き手としては嬉しいばかりです。それをこうして文字にして伝えてくださったことをとてもありがたく思います!今度とも、どうぞよろしくお願いします。 (2017年6月4日 0時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
ahirudokuro112(プロフ) - 初めてコメントさせてもらいます。いつもとても楽しく読ませて貰ってます。気づけば毎日朝と夜に更新されてないかチェックするのが日課になってます笑。ぜひこの気持ちをお伝えできたらとコメントさせていただきました。 (2017年6月3日 23時) (レス) id: f8fb3df520 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - 井戸らさん» コメントありがとうございます。私の場合、気が付いたらこんな文体になってまして、くどいかな…とドキドキしながら書いてる面があるのですが…。それを褒めていただけるのは何より嬉しいです。今後もお楽しみに! (2017年5月27日 23時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:江之子 | 作成日時:2017年5月22日 1時