14#狡い手段 ページ42
.
「――遅効性の毒だった」
総統室にて、落ち着いた声色でその報告は成された。
報告主はグルッペン総統その人で、それを受けたオスマン様とトントン様――先程外交を終えたばかりの二人は瞠目する。しばし言葉を失う彼らに、グルッペン総統は溜め息を吐いた。
「一応確認するが、二人とも、これを欠片でも口にしてはいないな？」
"これ"、と彼が指し示した先にあったのは、言わずもがな、件の焼き菓子である。
「……ギリ、食ってへんよ」
「俺も」
それに関しては、この私が目の前で確認している。
部屋の隅のほうで密かに頷いていた私を、グルッペン総統がちらと見やる。
「しんぺい神に分析させたら、効果が出始めるのが半日後。徐々に体を蝕み、一日が終わる頃には死に至るだろう、とのことだ。……今回は彼女の手柄だな」
褒め称えるように目を細める総統に、軽く頭を下げて返しておく。
事の次第はこうだった。
別室に話し合いの場が移されたのち、私はまず総統の元へと焼き菓子をもっていく。事情を聴いた彼は、すぐにしんぺい神――軍医長様に分析をさせたのだった。結果はご覧の通りである。
「あちらさんが躊躇いなく食べたんは……」
「毒物であることを知らなかった――とするよりは、知っていてわざと食べてみせた、というほうが正しいだろうな。おおかた、ワクチンでも持参してきていたんだろう」
「そのための遅効性、か」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 389人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜風−yorukaze−(プロフ) - とても面白くて、サクサク読めます！これからも頑張ってください！ (2020年4月26日 17時) (
レス) id: 58cfefca5b (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - wlthzさん» コメント、ご意見ありがとうございます。一言についてですが、このスタンスをとれるのも紙媒体の小説にはないサイトの魅力だと考えていますし、これを気に入ってくださる方も居るので、今後は思いついたときに挿入するスタイルに変更しようと思います。 (2017年7月24日 22時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
wlthz(プロフ) - コメント失礼します。１話終わるごとに挿入される一言で興が削がれます。物語自体は面白く読ませて頂いているので、そこだけが少し不満です。 (2017年7月24日 19時) (レス) id: 45eb196b6e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：江之子
| 作成日時：2017年5月9日 0時
