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40/焼き菓子。 ページ40

*

 オスマン様は何事もなかったようにカップを戻して、クリスフォード外交官の反応を窺う。

「おぉ、お味のほうも賞賛に値しますな。これは何度でも飲みたいものです」

「お気に召したようで幸いです。またご足労頂くことがあれば、ご用意いたしましょう」

「それは楽しみですな」

 もう来なくてもいいが、という皮肉が通じているのか否か、クリスフォード外交官は満足げに顎をさすった後、何かを思い付いたように手を打った。

「そうだ。実はこちらも手土産を持ってきてましてね。……おい、それを」

 彼は後ろに控えたスーツの男から、何かを受け取った。

「我が国自慢の焼き菓子でしてね。紅茶が素晴らしいので、一緒に食してみたくなりました。お二人から直接感想もお聞きしたいところですし……ここに並べるよう彼女に頼んでも?」

「……えぇ、もちろん。君、お願いするよ」

『……かしこまりました』

 その包みを受け取って、私はワゴンに余っていた大きめの皿に焼き菓子を並べた。
見た目に可笑しな点はなく、国自慢というだけあって程良いバターの香りが上品だ。確かに紅茶に合いそうである。

 こちらが出した菓子の隣に置いたそれを、クリスフォード外交官は笑顔で見ている。
そして、「では不躾ながら、お先に失礼して」と一言ことわってから手を伸ばした。

 もぐもぐと頬張ったあと、紅茶をまた一口啜る。
彼はさも満足というように笑みを深めた。

「いやぁ、想像通りですな。自慢の焼き菓子と申しましたが、ここまで美味しく頂けたのは初めてですよ。紅茶のおかげですかな」

「……なるほど、そこまで気に入って頂けるとは」

「はっはっは。さぁさぁ、貴方がたも是非」

「それでは……お言葉に甘えて」

 甘いものに目がない彼のことだ。おそらく、クリスフォード外交官が先に食べたことに安心して、新しい甘味に胸を躍らせている。
表情には出ていないが、真っ直ぐに一つをつまんで、口元に持っていった。

 それを微笑んで眺めるクリスフォード外交官。相変わらず伏目なままのスーツの男。
やや躊躇ったあとで、ようやく焼き菓子に手を伸ばすトントン様。朝から続く悪い予感。

 部屋の壁際に立っていると、その全てが一望できる。
テーブルの上の焼き菓子に目が吸い寄せられた。何かが込み上げてくるような吐き気がした。

 ――気付いたときには、身体が動いていた。

*

41/粗相を、→←39/小さな棘を、



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江之子(えのこ)(プロフ) - wlthzさん» コメント、ご意見ありがとうございます。一言についてですが、このスタンスをとれるのも紙媒体の小説にはないサイトの魅力だと考えていますし、これを気に入ってくださる方も居るので、今後は思いついたときに挿入するスタイルに変更しようと思います。 (2017年7月24日 22時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
wlthz(プロフ) - コメント失礼します。1話終わるごとに挿入される一言で興が削がれます。物語自体は面白く読ませて頂いているので、そこだけが少し不満です。 (2017年7月24日 19時) (レス) id: 45eb196b6e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:江之子(えのこ) | 作成日時:2017年5月9日 0時

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