12#もてなしの準備 ページ36
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――あちらのお偉いさんが来るのは昼過ぎだ、準備を頼むゾ。
それに頷き、私たちは本日の面会の場となる来賓室の準備に取り掛かっていた。
使用人としての私の仕事といえば、紅茶や菓子の給仕だ。こういう時の為に、普段よりも良質のものが用意されている。
来賓室を軽く見回して特に不具合な点がないのを確認すると、とりあえずは部屋を後にした。
これで後は、サヴァン公国からの役人が到着するのを待つばかりである。
「用意はできたかな」
『……オスマン様。はい、滞りなく』
「ん」
様子を見に来たのか、オスマン様と部屋の前で出くわした。
周りに人がいないの確認して、私は気になっていたことを問いかける。
『本日お見えになるのは、公国の外交官様でしょうか』
「一応、そういう風に聞いてはいるけどね。大公が変わるタイミングで、上の人間が一気に刷新されたようやし……一体何が起こったのやら」
『……』
やはり一国のトップがわざわざ出向いてくる訳はなく、あちらが寄越すのは上層部の誰かということだろう。
それはこちらこそ同じことで、面会にはグルッペン総統は立ち会わない。そして、代わりにと言うように。
「ま、今回はトントンもついててくれる言うてるし、下手なことにはならへんやろ」
『……そうですね』
実質、我々国で総統に次ぐ地位にあるトントン様が臨席する手筈となっている。
これまで目立った交流のなかったサヴァン公国。今日の外交をきっかけに何かが変わるのは間違いないだろうが、おそらく彼らに任せれば悪いようにはならない。そんな気がする。
しかし。
何とは言えないもやもやとしたものが、朝から胸を占めて仕方がない。
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夜風−yorukaze−(プロフ) - とても面白くて、サクサク読めます!これからも頑張ってください! (2020年4月26日 17時) (レス) id: 58cfefca5b (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - wlthzさん» コメント、ご意見ありがとうございます。一言についてですが、このスタンスをとれるのも紙媒体の小説にはないサイトの魅力だと考えていますし、これを気に入ってくださる方も居るので、今後は思いついたときに挿入するスタイルに変更しようと思います。 (2017年7月24日 22時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
wlthz(プロフ) - コメント失礼します。1話終わるごとに挿入される一言で興が削がれます。物語自体は面白く読ませて頂いているので、そこだけが少し不満です。 (2017年7月24日 19時) (レス) id: 45eb196b6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:江之子 | 作成日時:2017年5月9日 0時