すかいぶるぅ。 (ページ3)

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episode-私の仕事。/1 ページ3

「それでね～、ケンくんったら皆の前でキスとかしちゃうんだもん、もうやんなっちゃうわ～」
「そんなこと言うならユナもだろ～？」

私の前でイチャつく、都会辺りをうろちょろしてそうな金髪カップルのラブラブな会話に私はにっこり笑って相槌を打つ。

「全くケンさんもユナさんもラブラブさんだねぇ。羨ましいよ。あ、うちもカップルジュース導入したんだけど要る？」

ハート形に交差したストローが刺さっている色んな装飾が盛られたソーダの載った写真をチラつかせながら、商品を売り込むのも忘れずに。

一見詐欺師みたいな仕事だけど、皆さん「ほんとあかねちゃんって上手いんだから」と笑ってくれる。

あ、とユナさんがケンさんから目を逸らしてその目を私と合わせる。

「それって本日のオススメに載ってた新商品？え、ユナ欲しいな～！」
「んー、そうだな、あかねちゃんそれちょうだい！」
「ひひっまいどあり～」

イタズラっ子のように笑い、一旦席を離れ材料を取ってきてからもう一度会話を再開した。

私のこの店での立場は、言うなれば「店員」だけど、ただの店員じゃない。客の悩みを聞く、言わば「相談員」の役割も担っている。

「で、今日は何の相談があるの？」

ハートにくり抜かれた果物や星形のナタデココが沈んでいる薄い水色のソーダを渡しながら、カップルに訊いた。

「あ、そうそう、それなんだけどね」

カップルソーダを頼む前から食べていたモーニングセットを咀嚼しながら、ユナさんが悩みごとを切り出した。

２人には共通の友達がいて(ミサキさんとユウジさんというらしい)、その２人はお互いのことが好きなんだけど告白出来ずにいるらしい。

それって相談なの？とか思いつつユナさんとケンさんの心をマスターキーで開けて覗いてみる。

「見てるこっちがモヤモヤするのよ～」

【ミサキは自分を卑下しすぎるところがあるからなかなか言えずにいるのよね】

【ユウジくんはチャラ男だからミサキと付き合ってほしくない、っていうのが本音だけど】

「ほんとだよな、早く付き合えって」

【もうユウジも大学生なんだし、彼女の１人や２人つくんなきゃまずいっての】

【っていうのが建前で、ミサキちゃんが勘違いしてるだけなんだけどさ…】

……なるほど。つまりこういうことね。

ミサキさんはユウジさんと両想いだと思っている。だけどユウジさんはミサキさんのことを好きじゃない。

……んー、難しいなぁ！！