翠の灯火 (ページ5) - 小説/夢小説

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:14,455 hit

第03話　賢者の石ｰ3 ページ5

目を覚ますと、知らないベッドの上だった。どういうわけか、全く体が動かない。ベッドの上で唸ることもできずに辺りの様子を伺っていると、看護師らしき女性と目があった。彼女はたいそう驚いた様子で私を見ていたが、すぐに気を取り直して慌てて立ち去ってしまった。

　すぐにさっきの女性が別の人を連れて戻ってきた。
「ここは聖マンゴ病院です。私が見えていますか」
　年配の医師らしき男性が問いかけた。頷こうにも体が動かず声も出なかったので、yesの意として私は一つ瞬きをした。それを見た医師は、看護師らしき女性に目配せをして、また女性が出ていった。今度は看護師らしき男性が入ってきて私の体を起こし、私に水のようなものを飲ませた。味はよくわからなかったが、色からして相当に不味そうな液体だった。
「これで声が出るはずです。話せますか」
「……はい」
　酷く掠れた声だった。喉はカラカラで息をするだけでもひりひりと痛んだ。医師は神妙な面持ちでこう言った。
「Mr.エバンズ。今日は1989年8月26日です。あなたが例のあの人の襲撃に遭った晩から実に8年が経過しています」
「……な……」
　息が止まった。8年だって!?では、私は8年もここにいたというのか!私は8年間も眠っていたのか。そんな、そんな。有り得ないことではない。しかしあの男の呪文を防げるなどとは到底思っていなかった。いや、私のことは今はいい。問題は妹たちだ。私が妹たちの安否を尋ねようとして息を吸い込んだ拍子に激しく咳き込んだとき、また別の人が部屋に入ってきた。
　紫のマントを羽織った老人。そんな、まさか。どうして
「……せん、せい……なぜ……」
　ダンブルドアは私を見て酷く驚いた顔をして、その後安堵の表情を浮かべた。
「意識が戻ってよかった、A。調子はどうかね」
「せんせい……いもうとは……りりーは、ぶじ……ですか……はりー、も……」
　途切れ途切れになんとか声を絞り出す。一言発する度に喉が焼けつくように痛んだ。
「おおA。君には悲しい知らせをせねばならん」
　そんな。嫌だ。違う。嫌だ嫌だ嫌だ。私は、絶対に
「リリーとジェームズは死んだよ。ハリーは君の妹の家で暮らしている」
「……ああ……っ……」
　本当は、わかっていた。だが信じたくなかった。私が生きているということは、つまり、妹にあれを防ぐ手段はなかったのだ。
「わたしが、ころして……しまった……」
　目の前が真っ暗になって、全身の力が抜けた。
　