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漆 対、鬼 ページ9

『(さっき一瞬、鬼の気配が森の方からした。行かないと…)』

己の気配と匂い、音を最小限に抑えながら森の奥へ進んでいく。

そんな時思い出していたのは、少年との会話。



「おにいちゃんは、ももいろのはおりをきてたんだ」

『へぇ、ありがとう。これでお兄さんが分かる。』



桃色の羽織を着た男の子。それしか情報がない。


『(もし鬼になっていたりしたら…)』


頭を振って、そんな嫌な考えは捨てる。

なる訳ないじゃない、馬鹿なの私。

大切なお兄さんをそんな風に言うなんて。

お兄ちゃんを。


.


.


… いた。


森の奥のほら穴に鬼はいた。

舌がだらんと延びてて、四つん這いで歩いている。

十二鬼月ではないようだった。一安心だ。

正直言うと、こういう鬼はあまり好きじゃない。気味が悪い。


目を凝らし、ほら穴をよくよく見てみると人が穴の奥の方で身を寄せあっていた。

食われる前に行かないと…


『全集中 夢の呼吸 壱ノ型 白昼夢』

壱ノ型は高速移動しながら相手を切りつける技。


右腕は切り落とせたけど駄目だ。

「自らメシになりに来たのか、はるばるご苦労さん。
 血鬼術 毒矢」


…嗚呼、この声、気持ち悪い。人の面影も無い。

多分この血鬼術は毒の矢を飛ばしてる。矢も近くに来ないと見えない。

当分はこの鬼と遊ぶことになるかな。


____
___
__
_


『はぁ、はぁっ』

元々体力の無い私は、こういう長期戦が苦手だ。

まだまだ弱い自分。

それでも柱になったんだ、やらないと。


…いつの間にか応援も駆けつけてくれたし。


「あの子は藤の花の屋敷に送ったわ。
 恋の呼吸 壱ノ型 初恋のわななき」

『ありがとうございます。
 夢の呼吸 弐ノ型 ゆめ幻』

「なぬっぅ」


相性がいい呼吸同士は、よく任務に行く。

そういう話を聞いたことがあった。


「恋」と「夢」。


誰もが1度は恋をして、好きな子と結ばれる夢を見るはず。

例えそれが叶わぬものだとしても。

もう会えない相手だとしても。



「うわぁぁぁぁあぁあ」


キンキンとした声を上げた鬼の頚に、日輪刀をあてがう。

 「『さようなら』」


呻きながら消えていく鬼をよそに、ほら穴へと向かう。

捌 話→←ふたつめの零. 作者から



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(プロフ) - 更新頑張ってください^ - ^ (2020年10月11日 21時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
音涙(プロフ) - 梅雨さん» 嬉しいお言葉…ありがとうございます!頑張りますね! (2020年4月5日 7時) (レス) id: 8511fd69ef (このIDを非表示/違反報告)
梅雨(プロフ) - 続きが気になります!!!これからも無理せず頑張ってください!! (2020年4月4日 20時) (レス) id: fba24efeb3 (このIDを非表示/違反報告)
音涙(プロフ) - 奏琴さん» ありがとうございます!更新頑張ります…!よければこれからも読んでくれると嬉しいです! (2020年4月2日 18時) (レス) id: 8511fd69ef (このIDを非表示/違反報告)
奏琴(プロフ) - とても面白いです!!これからも更新頑張ってください! (2020年4月2日 14時) (レス) id: 11805289e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:音涙 | 作成日時:2020年3月29日 8時

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