166.見抜かれた不安と弱さ ページ12
(結局アレはなんだったのかしら。)
椅子に座り机の上の本を眺めながら私は先程の事を思い出す。
廊下でぬらりさんとの会話中に急に体の自由を奪われてしまった。
(エンマくんに声を掛けられてからそうなったのよね。)
突然頭がボーッとして声も出せなくなる。
確かにそこにいるのに自分が自分でなくなるような感覚だった。
(もしかしてこれも『今回の敵』の仕業…!?)
そう考え至って身震いをしている私の耳に鋭い声が突き刺さった。
「聞いていらっしゃいますか?A様。」
「え?…あ、すみません…。」
ハッとして我に返ると目の前では女官長が厳しい目で私を見据えていた。
「まるで身に入っておりませんね。今日はここまでにいたしますか?」
厳しい口調でそう告げられ、私は慌てて弁解し始める。
「え、いや…。少し考え事をしていました。きちんとやりますので続きをお願いします。」
それから私が少し頭を下げると、女官長はハァと深い溜息をついて手に持った本を閉じた。
「そんな状態では何も身につかないでしょう。まずはあなた様の杞憂を取り除かなくては。一体何をそんなにお悩みなのですか?」
厳しい口調の中にわずかながらの温かみを感じ、私は恐る恐る顔を上げる。
すると女官長はいつになく優しい目をして私を見つめていた。
その瞳に導かれるかのように私は静かに口を開く。
「…大した事ではないんです。ただ『誘惑』とは何か、『今回の敵』とはなにかとかいろいろ考えていたら行き詰ってしまって…。」
そして自嘲的に笑うと女官長は眉をピクリと動かした。
「『今回の敵』――とは先日の暗殺者の件ですか?」
静かな部屋に凛とした女官長の声が響く。
私はゆっくりと頷くと語り始めた。
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湖月さくら(プロフ) - アミュレットさん» アミュレット様。いつもありがとうございます。その後こうなっています(笑)。エンマ大王様のドキドキを楽しんで…いやいや伝わっていただけたら嬉しいです。これからどうなるのか、どうぞお楽しみくださいね。よろしくお願いします。 (2018年4月29日 2時) (レス) id: 6e3a0f3a7d (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット(プロフ) - どうなるのか、ドキドキします! (2018年4月26日 22時) (レス) id: ca1512717a (このIDを非表示/違反報告)
湖月さくら(プロフ) - エマさん» エマ様。初めまして。ご覧いただきましてありがとうございます。大好きだなんて本当に嬉しいです。いえいえ、私はまだまだ未熟者でして…。皆さんに楽しんでいただけるように頑張ります。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2018年4月26日 8時) (レス) id: 6e3a0f3a7d (このIDを非表示/違反報告)
エマ - はじめまして。いつもこのシリーズを読んでます。大好きなシリーズです!私もこんなのが書けたらなぁ…。 (2018年4月25日 5時) (レス) id: 31fc5a4b43 (このIDを非表示/違反報告)
湖月さくら(プロフ) - 愛鬼さん» 愛鬼様。お久しぶりです。お楽しみいただけたようで良かったです。果たしてエンマ大王様の願い事は何ぞや…。最後までどうぞご覧くださいね。これからもよろしくお願いします。 (2018年3月19日 1時) (レス) id: 01629e384a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:湖月さくら | 作成日時:2018年3月11日 3時