太刀川隊のもう１人の射手。season５

射手。９話 ページ10

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中学校を近界民が襲った事件から、ボーダーの規律を破ってトリガーを利用した隊員。そこで近界民側に情報が漏れたのではないかとの質問。根付さんはその可能性を否定せず、「それが原因であるとは……」と言葉を濁した。記者の質問はそこから広がり、その隊員の処分はどうしたのか、まだボーダーにいるのか、他に情報が漏れる心当たりがあるのか、などが寄せられた。

そしてそこで病衣で右手と片足をギプスで固めた三雲先輩が登場。学校でトリガーを使ったのは自分だと大勢の記者の前で発表した。忍田本部長や根付さんがフォローに入ろうとしたけどそれも叶わず、そいつに喋らせろ、本人が話すと言ってるんだ、と言う記者の怒号が飛んだらしい。




「……それ、って……」

「まぁ俺が思うに誘導だろうな。確かにボーダーのおかげでたくさんの市民が助かった。ボーダーがいなければ全滅してた可能性だってあったんだ。だからボーダー側には余裕があるし、マスコミ側はイラついてたんだ。悲しみに暮れるほど、誰かのせいにしたがるからな」

「……」



いかにも上層部が考えそうなことだなぁ。今までの話を訊いていると、記者側には残せる情報がなくなってしまうから。好き勝手書かれてしまうかもしれない。そう考えるとボーダー全体から隊員１人に擦りつけたほうが組織としては都合がいいんだろう。

あたしがうつむくと、大輝は黒い物体をポケットから取り出した。



「ボイスレコーダー。ちょっと容量少なくて、その“みくもせんぱい”？の討論だけ撮ってる」



俺から訊くよりも生で訊いた方がいいだろ、とあたしの手にボイスレコーダーを握らせる大輝。握らせると、詩乃と友紀が座っているソファに移動して腰を下ろした。それを見たあたしはゆっくりと指を動かし、スイッチを押す。



•『……君が先月学校で、訓練生でありながらトリガーを使ったのはボーダーの規則違反だという話がある。それは知っていたかな？』


『はい』


•『君のその行動によって訓練生のトリガーの情報が漏れた疑いがあるんだが、それについてはどう思うかな？』


『今にして思えば……、その可能性はあると思います』


•『事の重大さを分かっていないのか！？３２人が犠牲になったんだぞ！？』


•『「今にして思えば」！？そんな言い訳が通用するか！』


『言い訳する気はありません。情報が漏れると知っていたとしても、やっぱりトリガーを使ったと思います。それくらい切羽詰まった状況でした』


•『そのせいでその先さらに犠牲者が出るとしてもかね！？』


『はい』

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