君の存在14 ページ27
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「っ…ちょっと待って」
切羽詰まったような声で腕を掴まれる。
───
紫耀と別れて数日後。
いつも通り楽屋に来て、いつも通り仕事をこなす。
俺の時間は止まったままやけど、日常はどんどん過ぎていく。
今日も仕事が終わり帰ろうとした時、聞き慣れた声に堰き止められる。
久しぶりに触れた大好きな手が温かい。
一瞬にして 止まっていた時間が動き出しそうになるのをぐっと耐える。
「なに?」
感情をできるだけ抑えて無表情で振り返ると、縋るような瞳で見つめられる。
「話がある。俺の家に来て。」
有無を言わせないかのように、握られた手に力がこもる。
「...わかった」
俺らのただならぬ雰囲気に気づいたのか、海人が慌ててこちらに駆け寄ってきた。そっと俺の耳元に近づき囁く。
「廉、俺の言ったこと忘れないでね。俺はいつだって廉の傍にいるから。辛くなったら いつでも頼ってね。」
頼もしくなった弟の一言で、張り詰めていた緊張が少し緩んだ気がした。
「ありがとう、海人。」
海人の方を向いて微笑むと、ぎゅっと掴まれた腕に走る痛み。
「......っいた」
それでも痛がる隙も与えずに強く引っ張られる。
「廉、いくよ」
一層低くなった声で言われ、もう何も言えず黙って引かれるまま ついて行った。
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作者名:ゆうき | 作成日時:2019年10月8日 1時