キミとぼく (ページ28)

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君の存在15 ページ28

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久しぶりに入った部屋は大好きな匂いで溢れていて、なんだか悲しくなった。

この香りを独り占めできるんはもう俺やないんやなぁ。

｢話ってなに？俺は話すことなんかないんやけど。｣

早くこの部屋から出ていきたくて、急かすように言う。でも紫耀は俯いたまま何も言わない。

しばらくしてやっと紫耀が口を開いた。

｢...て.....ない｣

｢えっ...｣

｢俺は別れるなんて言ってない｣

低い声に背筋がゾッとする。

俯いた顔をあげじっと見つめられると、野獣に囚われたかのように体が固まる。

｢廉は、俺と別れたいの？｣

ゆっくりと顔を近づけられ、その怒気に怯んで何も言えなくなる。

｢俺より好きな人ができた？｣

何も言えない俺なんかお構いなしに、一方的に投げかけられる質問。

ぶつかりそうなところで、近づいていた顔が止まった。

一瞬、怒気を含んでいた瞳が不安げに揺れた。

｢......それって...かいと...？｣

えっ......

予想外の質問にさっきまでの恐怖心が消えていく。

どういうこと？
なんでそうなるん？

頭が追いつかず何も言わないのを肯定と受け取ったのか、さっきまでの怒気はなりを潜め悲しげに俯く紫耀。

｢さっきも、2人でこそこそ話してたもんな。それに、この前だって…俺に何も言わずに2人で飯食いに行ってたよな。｣

あっ......

そこまで言われて気づいた。

あの日は紫耀と彼女のことで頭がいっぱいですっかり忘れてた。

誰かと2人で出掛けるときは連絡するって約束。

あの時はまだ付き合ってたのに...

｢相手が海人だったから、忘れてるだけかなって気にしないようにしてたけど。でもそれから2人の距離が近くなった気がして。そんな時に好きな人ができたって言われたから、やっぱり海人のことが好きになったのかなって...｣

俯いていて表情は分からないが、消え入りそうな弱った声に心が苦しくなる。

もうお前には別の人がおるんやろ...？

俺のことなんかほっといてや...

そんな悲しそうにせんといてや...

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