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ないもの、とユキが言いかけたところで強烈なチョップが炸裂した。ヒリヒリと痛む頭をさすりながら目の前でチョップの構えをしていた綾を睨みつける。

「も、もう!!いきなり何すん……」

「寝ぼけたこと言わないで」

「あ、綾ちゃ……」

「私はちゃんとここにいるから」

「あ……」

「わかった?」

「……ワカリマシタ」

ユキの言葉を遮り続け、ユキがコクリとぎこちなく頷くと満足そうに頷いた。その表情にユキはユキはふっと顔を和らげる。

「そーだね。まぼろしだったら強烈なチョップなんてできないもんね」

「……そーだよ。馬鹿なの」

「もしかしてさっきのチョップって自分がここにいることをわからせるために?」

「もしかしなくてもそうだよ。それ以外何があるのさ」

ツンっとそっぽ向く綾。その拗ねたような仕草にユキは笑みがこぼれた。

「うん。……うん!!そっかそっか!!」

「うわ何その嬉しそうな顔。ムカつく」

ニッコニッコと笑うユキに若干引き気味の綾は、そういえばとふと思う。ここに来る前に胸を巣食っていたモヤモヤとした気持ちが綺麗サッパリとなくなっていることに気付いたのだ。

何故だ?と内心首を傾げているとユキが一言。

「綾ちゃん。寂しかったんだね!!だから会いにきてくれたんだ!!とても嬉しいよありがとう!!」

陽だまりのような温かな笑顔を浮かべるユキに綾は目を見開いて固まった。寂しかった?自分が?

ありえない。生まれてこの方、そんなこと一度も思ったことなどない。なのに、なんで……

「(納得してる自分がいる……)」

反論しようとを開いた口が自然と閉じる。心なしか毒素も抜けいつのまにか力んでいた肩の力をふっと抜いた。

自分は…寂しかったというのか。
たかが1週間と3日会えなかったというだけで。

「……意味わかんない。なんなの、あんたほんと、なんなの」

いくら言葉で拒もうと、態度で拒絶しようと、挫けずに鋼メンタルよろしくで綾の隣を陣取る不思議な存在。前の自分なら邪険に扱っていたというのに。

頭を抱え溜息を吐く綾にキョトンとしていたユキは満面の笑みを浮かべ、こう答えた。

「親友!!」

「認めないっっ!!!」

一コンマもおかずに否定する綾にユキはえーーっなんでぇと声を上げる。

「……親友だなんて友達の枠組みを超えてるでしょ。つかハードル高すぎ。普通友達からじゃないの…」

ボソボソと独り言のように呟き、恥ずかしそうに頰を赤らめる綾。

〃→←〃


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作者名:夜野兎 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1  
作成日時:2018年8月27日 0時

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