255話です ページ32
手を離された綾は少しフラついている。確かこめかみは強打すると平衡感覚が失われ、意識不明になることがあると本で読んだことがある気がする。
流石の恭弥さんも彼女のこめかみを気を失うほどに強く掴んではいなかったようだが、……彼女からしてみたらかなり痛かったらしい。瞳が潤み涙目になっている。
「兄さんのせいで気を失うかと思った。つか絶対に脳細胞のいくつかがやられた。私の頭蓋骨が割れるかと思った」
「いんじゃない。別に」
「いんっ！？？よくないから！！つーか、一瞬意識が遠のいたんだけど！！」
「知らない」
「っ、酷い！！」
兄さんのバカ！アホ！ヘタレ！と悪口を並べる綾に恭弥さんはピクリと眉を動かし目を眇めた。
「……へぇ。そんなこと言っていいんだ」
「何がよ！？」
「僕が気付いてないとでも思ったの？」
「だから！な……」
「ショバ代回収。どうせ1割もしてないんでしょ」
目を吊り上げ怒りの表情を浮かべていた綾の表情が恭弥さんの言葉を聞いた途端、焦りへと変わる。
どうやら彼は、彼女の嘘を見抜いていたらしい。と言ってもあの時、吃ったのでそうではないかと私も思っていたが……
「へ、あ、いや、そ、そそ、それはぁ……」
「何。言いたいことがあるならい……」
「ショバ代回収に行ってきマス！！」
恭弥さんの言葉をあからさまに遮るとシュビ、と敬礼し綾は走り去ってしまった。正論ぶつけられて返す言葉もなかったかららしい。どうしようもない子である。
やれやれと肩を竦め呆れた目を彼女の後ろ姿に注ぐ恭弥さんに私は少し笑った。
「恭弥さん。いつまでもここにいるわけにもいかないですし行きましょうか」
「そうだね」
息を吐く恭弥さんは踵を返し歩き出したのを見てから私はツナ達に会釈して恭弥さんの後を追いかけた。
＊＊＊
「ショバ代が去年より少ない」
ショバ代回収を終えた私と恭弥さんは人気の少ない木陰で休憩していると恭弥さんが不機嫌そうに札を数えながら言った。
「少ないですか？」
じっと私は彼が持つ札を見つめる。束となっている1万円札が少ないとは思えない。
「うん。綾達から貰ったショバ代を合わせても去年より少ない。三分の一ぐらい払えない屋台があるみたいだ」
「……ちなみにその屋台って…」
「潰したよ」
サラっと平然と言う恭弥さん。その表情は一切の情けなどなくただ自分の仕事を終えたどこかのヤのつく商業の人に思えた。そんな彼に、私はああやっぱりと心の中で呟く。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
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夜野兎(プロフ) - あーさん» まじですか笑笑。なんとなくで思いついたものを詰め込んでみたらこうなりました！！コメントありがとうございます！！ (2017年11月23日 15時) (
レス) id: e61c8df72f (このIDを非表示/違反報告)
あー - 表紙絵がうけますwww (2017年11月23日 10時) (レス) id: 39cc4c9138 (このIDを非表示/違反報告)
夜野兎(プロフ) - にゃーさんさん» ありがとうございます！！更新頑張ります！！ (2017年11月12日 9時) (レス) id: e61c8df72f (このIDを非表示/違反報告)
にゃーさん - 面白いです。
更新頑張ってください。 (2017年11月12日 1時) (携帯から) (レス) id: bef68917c1 (このIDを非表示/違反報告)
夜野兎(プロフ) - 扇華→さん» コメントありがとうございます！！頑張って更新したいと思います！！ (2017年11月9日 8時) (レス) id: e61c8df72f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜野兎 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時：2017年11月9日 0時
