エンドロールのその後で。【黒羽快斗】

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クローズまでの勤務を終え、荷物を持ってお店を出る。

音楽を聴こうとスマホを開くと、ロック画面にニュースアカウントからの通知が届いていた。


『シンガポールで大型船が衝突。マリーナベイ・サンズホテル半壊』


「…え？」


シンガポール？大型船衝突？

慌ててロックを解除しニュースを見る。内容は、シンガポールのマリーナベイ・サンズというホテルに大型船が衝突し、ホテルが半壊になったこと、大型船衝突の犯人はシンガポールで有名な資産家レオン・ローであること、シンガポールでは2件殺人事件が起きていたこと、そして、


「キッド…」


今日までシンガポール空手トーナメントが開催されており、その試合のチャンピオンベルトに『紺青の拳』という世界最大級のサファイアが埋め込まれているらしく。

怪盗キッドは、その『紺青の拳』というビッグジュエルを盗むという予告状を出していた、という文章が下の方に綴られていた。


「快斗くん、」


無事ですか？


快斗くんのLINEを開いて、そこまで打ち込む。

でも、送信をタップ出来ずにいた。


…快斗くんは、他人を不安にさせるのが多分嫌いだ。

いつも明るく振る舞う彼の笑顔の下には、きっと辛いとか痛いとか苦しいとか悲しいとか、そんなものがあるはずなのに、そんな事一切感じさせない。

それは、彼女である私に対しても、ずっと昔からの付き合いである幼馴染の青子ちゃんに対してもだ。


…明るく笑う快斗くんが好きだけど、きっと無事に帰ってくるって信じてるけど、私にくらい心配させてほしい。

快斗くんが怪盗キッドになる度に、私はやっぱり不安になってしまうから。


だから、早く帰ってきてよ。


『無事ですか？』


覚悟を決めて、送信した一言。


『無事だよ』『俺を誰だと思ってんだよ』

早く快斗くんのそんな声が聴きたい。


震える足を動かして、駅までの道を歩いた。


・


家に帰って、お風呂に入ってベッドに寝転がって。

…眠れそうにないな。

シンガポールに現れたという怪盗キッドの情報を、ネットやSNSで探してみたけど、さすが怪盗キッドと言うべきか、『大きな白い鳥が空を飛んでいた』なんて文章と空の写真ばかりだった。


本当に明日帰ってくるのかな。


既読がついてないかもう一度確認しようとLINEを開くと、ピロン、と新着のメッセージが届いた。


『羽田空港 16:32着』


快斗くんだ。…良かった。無事だったんだ。


『迎えに行ってもいいの？』


『待ってる』

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