〇34__方向転換 ページ34
手を上げながら思った。
あ、この状況で鉢合わせたら誤解される、と。
誤解も何も、一緒に帰ろうとしていることは事実なわけだけれど。
帰るという行動に対してではなく、その根底にある関係性を勘ぐられることを避けたかった。
テヒョン君は私にとって純粋に後輩だし、ヨンジュンにもそう映っていたはず。
けれども、あの日以来その構図は虚像と化していた。
あれもこれも、何かとテヒョン君と私の仲を怪しんでは楽しむゴシップガールのせいだ。
「お疲れ」
「ん」と返事をしたヨンジュンが、手ぶらの私を確認してから自転車へ目を向ける。
そして、「二人で帰るの?」と私たちの顔を交互に見た。
違うよ、と言いたい。
けれどもそうしてしまえば、私は救われてもテヒョン君が寂しい。
「いえ、」
答えに困っていると思いもよらない否定に思わず目を丸くした。
「部活組の下校時間だからヨンジュンさんも一緒に帰れないかなって話してたところなんです」
私の記憶が正しければ、絶対にそんな会話は交わしていなかった。
テヒョン君の方向転換に戸惑っていると「ね?Aさん」と肘で小突かれる。
「う、うん、そんな感じ」
これは恐らく合わせろの合図だと察して笑顔で取り繕うと、「じゃあグッドタイミングだったわけだ」とヨンジュンがニカッと歯を見せた。
そのまま流れるように私を挟んで左右についた二人と正門を通過し、歩道へ出た。
「良かったらヨンジュンさんもどうぞ」
私と自分のを脇に寄せ、カゴの中で僅かなスペースを作ったテヒョン君に「重いだろ、大丈夫。ありがとう」と優しく遠慮する姿に小さく感動してしまう。
「相変わらず勉強?」
「はい、そろそろ期末試験も控えてますし」
しばらく宙を見つめたヨンジュンが「まだまだ先じゃん」と首を捻る。
「試験の高得点は一朝一夕で叶うものではありませんから」
「一石二鳥?」
「イッチョウ、イッセキです。ざっくり言えば短期間って意味です」
「あーー難しい!聞こえない!」
顔をしかめたヨンジュンが両耳を塞いだ。
「すみません」と生真面目に謝るテヒョン君に思わず吹き出してしまう。
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am(プロフ) - ノアさん» ノア様 嬉しいお言葉をありがとうございます。丁度構想を練っている時分にコメント通知を受け取ったので、創作意欲が湧きました♡これからも涙腺を刺激するようなテヒョン君を書けるよう頑張ります⋆⸜ ⚘ ⸝⋆ (2021年10月8日 23時) (レス) @page48 id: ee43218214 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 文章が天才的すぎます!!泣 テヒョンペンなので今泣きながら見てます笑 更新楽しみにしてます!!^^* (2021年10月8日 21時) (レス) @page46 id: f00cf6f10c (このIDを非表示/違反報告)
am(プロフ) - ミミさん» ミミ様 早速のレスポンスありがとうございます!晴天の霹靂と言ったところでしょうか。ヨンジュン、最近黙ってばかりだなぁと心配しながら執筆しております🥲 (2021年9月28日 3時) (レス) id: ee43218214 (このIDを非表示/違反報告)
ミミ(プロフ) - am様、二度目のメッセージを投稿します。今ほど更新された話を読んだところですが、いやぁ、こうきたか!って感じです。主人公ちゃんに気持ちを寄せてしまっています。主人公ちゃんが頭の良さが文章の描写から伝わってきますね。ああ、続きどうなるんだろう。 (2021年9月27日 16時) (レス) id: 877c5b508b (このIDを非表示/違反報告)
am(プロフ) - aaaoooさん» aaaooo様 素敵なお言葉をありがとうございます。伝えたい🐿さんが届いているようで嬉しいです!もっと読みたい、そう思ってもらえる作品を綴っていくのでよろしくお願い致します♡ (2021年9月27日 16時) (レス) id: ee43218214 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:am | 作成日時:2021年8月22日 14時