〇27__セウンから聞いた ページ27
授業終了のチャイムが鳴ったので、先生にお礼を言って扉を閉めた。
結局テヒョン君はあの後、宣言通りすぐに教室へ戻って行った。
保健室は校内の隅に位置している。
隣の美術室には授業が行われた形跡が無く、この一角は閑散としていた。
よりによって唇を怪我するなんて、日常生活に支障が出るだろうな。
うわ、洗顔なんて激痛じゃない?
いずれ訪れる試練に頭を抱えたくなったけれど、発端は上の空だった私だ。
憂鬱な気持ちを抱えて三歩先の床を見つめながら歩いていると、「A!」と名前を呼ぶ声がした。
前方に目を向けるとヨンジュンが駆け足でこちらへ向かってくる。
予期せぬ登場は心臓に悪い、そんなことを考えている間に膝に手をついたヨンジュンが肩を上下させながら私を見上げていた。
「セウンから聞いた、大丈夫?」
リズミカルに吐き出される呼吸を整えたヨンジュンに顔を覗き込まれ、思わず後ずさる。
「大丈夫だけど、気は抜けない」
絆創膏の上から傷口を押さえ、負荷がかからないよう慎重に口を動かした。
「痛そう」と眉をひそめたヨンジュンが、「どうしたって顔でボールを受けるんだよ」と困ったように笑う。
「考え事してたらこうなった」
しばらく二人で廊下を真っ直ぐ歩いていると、自分がまだジャージを着用していることを思い出した。
更衣室に向かうため右折すると、左に曲がって階段に足をかけたヨンジュンが不思議そうに見つめていた。
「着替えないと、これ」
真っ白な袖を摘むと「あぁ、そっか」と合点がいったヨンジュンが階段から足を離す。
「いいよ、戻ってて。ご飯まだなんじゃない?」
「いいよ、まだ時間あるし」
そう言って先に歩き出したヨンジュンの後を慌てて追った。
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am(プロフ) - ノアさん» ノア様 嬉しいお言葉をありがとうございます。丁度構想を練っている時分にコメント通知を受け取ったので、創作意欲が湧きました♡これからも涙腺を刺激するようなテヒョン君を書けるよう頑張ります⋆⸜ ⚘ ⸝⋆ (2021年10月8日 23時) (レス) @page48 id: ee43218214 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 文章が天才的すぎます!!泣 テヒョンペンなので今泣きながら見てます笑 更新楽しみにしてます!!^^* (2021年10月8日 21時) (レス) @page46 id: f00cf6f10c (このIDを非表示/違反報告)
am(プロフ) - ミミさん» ミミ様 早速のレスポンスありがとうございます!晴天の霹靂と言ったところでしょうか。ヨンジュン、最近黙ってばかりだなぁと心配しながら執筆しております🥲 (2021年9月28日 3時) (レス) id: ee43218214 (このIDを非表示/違反報告)
ミミ(プロフ) - am様、二度目のメッセージを投稿します。今ほど更新された話を読んだところですが、いやぁ、こうきたか!って感じです。主人公ちゃんに気持ちを寄せてしまっています。主人公ちゃんが頭の良さが文章の描写から伝わってきますね。ああ、続きどうなるんだろう。 (2021年9月27日 16時) (レス) id: 877c5b508b (このIDを非表示/違反報告)
am(プロフ) - aaaoooさん» aaaooo様 素敵なお言葉をありがとうございます。伝えたい🐿さんが届いているようで嬉しいです!もっと読みたい、そう思ってもらえる作品を綴っていくのでよろしくお願い致します♡ (2021年9月27日 16時) (レス) id: ee43218214 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:am | 作成日時:2021年8月22日 14時