■ ページ11
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授業中にこっそりと、それを描き続けた。隠して持ってきていたスケッチブックに、シャーペンと色鉛筆だけで。休憩時間友人に呼ばれても断って、弁当を食べる時間すら惜しんで、ずっと。
放課後、これから病院に向かおうというその時。担任の教師に呼び止められた。逸る気持ちをどうにか抑えて、話を聞く。
リュックから追い出された荷物を入れたトートバッグが、床を打った。
真っ白い直方体。父親の顔を覆う白。ゆらゆらと上る煙。部屋中に漂う、噎せ返るような匂い。
姉も兄も泣いていた。畳に膝をついて、ハンカチで目元を押さえて。母はミツリがやってきたのを見ると、直方体の窓から覗く白い布を捲った。
化粧を施されたらしく、真白いながらも美しい肌。もう開くことのない、瞼。見せたかったものが見せられなかった。間に合わなかった。ぼくは、お父さんに、何もしてあげられなかった。泣くべきなのに、涙が落ちてこなかった。自分事なのに他人事のような、一枚ガラスを隔てた向こう側の出来事のような、黄ばんだフィルムの中の悲劇のような。あの、唯一ミツリを褒めてくれた愛しいひとが、星になってしまっただなんて、信じられなかった。
母親がミツリのトートを見遣る。そこから覗くスケッチブックに、一瞬目を見開いて、く、と眉を顰めた。
「お前、まさか学校で絵を描いていたんじゃないでしょうね」
息の吸い方を忘れた。ひゅ、と喉が鳴る。握り締めた手のひらに汗が滲む。詰るような冷たい目が、自分を射抜いている。
「お、……お父さん、に、見せて、あげたくて……」
トートバッグを胸元で抱き締めて、俯く。せめて。せめて、この絵だけは、お父さんに。
直後、破裂音。左の頬が焼けるように痛んで、ようやく頬を叩かれたのだと理解した。母親は、怒っていた。これまでのような失望ではない、明確な怒り。視線でミツリを殺してしまわんばかりの烈火。
「この、親不孝者」
その言葉で、何か、取り返しのつかないものが壊れた気がした。
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元素(プロフ) - CS提出ありがとうございます……重い……重いよう……つらいよ……なんで……？ 不備等ありませんのでこのまま受理させていただきます！幸せになってくれよ…… 今後も当企画をよろしくお願いいたします！ (2022年6月16日 21時) (
レス) @page14 id: 656d2fa00c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アカツキ | 作成日時：2022年6月15日 22時
