検索窓
今日:50 hit、昨日:69 hit、合計:188,777 hit

□質疑応答 / 写真家 ページ12

「君、今恋をしているかい?」
「え?…恋、ですか」


突然の質問にパチ、と目を瞬かせたAは顎に指を添え真面目にも考え始める。

彼女が黙考している間にも机の上に置いている紅茶はどんどん冷めているが、猫舌な彼女にはそちらの方がいいだろう。写真家は自分のカップを傾けるとAが淹れた紅茶を喉に流した。

考える時点でしていないと結論付けてもいいだろう。それでも写真家が彼女に声を掛ける事は無く、彼女の中で纏まるまで待った。

問いへの回答は、写真家の予想とは違った。


「してる、かもしれないです」
「……かもしれないって、可能性なの?」
「よく分からないんです。これがただの敬愛か、恋情なのか」
「ふぅん、まぁAは感受性が低いものね。恋とか何だと考えたことは少なそうだ」
「失礼ですよ」


恋と感受性は話が別だろう、とAがぶすくれ顔でカップに口付ける。

まだ彼女の適温では無かったのか「あち」と舌が外に露出した。

あまりにも無防備なそれに、喰らいついてやろうかと写真家の胸中で仄暗い炎が灯される。

ああいけない、まだ我慢しなくては。コホン、と灯されたばかりの炎を彼は咳払いで払い除けた。


「ところでその敬愛か恋情か分からない相手は誰?普段からAと仲が良い人と言うと、納棺師、占い師、航海士、ああ後リッパーか」
「な、なんでそんな、仲が良いって知ってるんですか」
「……どうしてだと思う?」


伏し目がちになっていたAが挙げられた四人の名にパッと視線を上げれば、ターコイズブルーがじっと自身を見詰めている事に気が付いた。

吸い込まれてしまいそうなそれに慌てて目を逸らしたAに写真家は喉の奥で笑い、身を乗り出して彼女の頬に手を添える。


「ねぇ、どうしてだと思う?」
「や、あの、近い…」


写真家が接近した途端に耳までもを真っ赤にしてしまうAは、しかし添えられた手を振り払う事はせず逃げなかった。

こういう、いかにも"食べてください"と言わんばかりの態度をとる被食者が写真家の加虐心を煽るのだ。たとえそれが無自覚であろうと、仄暗い炎を二度も消すのは難しい。


「ほぉら、早く答えて」
「ぁ、う……」


ターコイズブルーの瞳が意地悪く三日月を描いた。

□猫被り / 納棺師→←/



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (318 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1254人がお気に入り
設定タグ:第五人格 , IdentityV , 短編集
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

yuki maki(プロフ) - Twitterフォロー失礼しまーす (2022年5月1日 17時) (レス) id: 6c4d3fd2ca (このIDを非表示/違反報告)
名無してゃん - 人外シリーズ待ってましたっ!ほんとに楽しみにしてたので嬉しいです(´˘`*)ありがとうございます(´˘`*) (2020年12月23日 18時) (レス) id: 256c8decd9 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - ハルさん» 閲覧、コメントありがとうございます。私の他にも同じ感性(?)性癖(?)の人がいて嬉しいです(´ω`*)尊いとまで言って頂けて…!嬉しみの極みでございます…!こちらこそありがとうございます…! (2020年2月18日 1時) (レス) id: a8cecf9880 (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 人外シリーズ好きです。尊いです。有難う御座います。 (2020年2月12日 13時) (レス) id: ca92ab3e55 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - 黒いロシア帽さん» 閲覧、コメントありがとうございます〜。つまり禿げですね(((そう言ってもらえてとっても嬉しいです!ありがとうございます、頑張ります! (2020年2月3日 15時) (レス) id: a8cecf9880 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:遊歩 x他1人 | 作成日時:2019年11月17日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。