魚達は大海に放流された。【名探偵】 (ページ6)

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06.まるで正義のヒーローだった。ページ6

「……おにいさん、たすけてくれて、ありがとう」

彼を見上げてそう声を掛けると、彼も私を見下ろして柔らかく微笑んだ。

目線を合わせるように腰を屈めてよしよし頭を撫でてくれた彼は口を開く。

「偉かったね、お嬢さん。あれだけ詰め寄られてそれでも拒否を続けることは、誰にでも出来ることじゃない。」

「……A、しるくさんたちのことすきだから。あーゆーのは、いけないことなの」

「そうだよ、良い子だね。それを理解している君なら、きっと大好きなお兄さん達に迷惑を掛けることなんてないだろう」

「……おにいさん、おなまえは？」

「僕かい？僕は降谷零。友人と一緒に遊びに来ててね」

ああ、やっぱりご本人でしたか。まあこんな王子様フェイスそんな何人も居てたまるかって思うけどね。言うてイケメンいっぱい居るけども。……というか今、本名名乗ったな？

一緒にシルクさん達を待っててくれるつもりでいるのか、降谷さんは私の傍に屈み込んだままで居る。

「…ふるやさん、わんにゃん、すき？」

「ふふ…そうだね。僕は犬も猫も好きだよ」

私の知ってる彼は、例え私くらいの子供が相手であろうと本名を言うだなんてことはしない。でも彼は私に本名を名乗った。それは、何故だ？

「降谷！どこに行ったのかと思ったら、お前──あれ？」

「………あえ？！けんごさん！」

五「A。君もここに来ていたのか」

降「お。なんだ、二人こそ知り合いなのか？」

それはこっちの台詞ですよ！まさか健吾さんと降谷さんが繋がってるだなんて思わないじゃないですか普通！

…まあそもそも私最初の内はこの世界がそういう世界だって気付いてなかったんだけども。お話にならないか。

五「前にお前にも話しただろう？俺達が長期予定で抱えてる案件のひとつだよ」

降「ああ！なるほど、君が噂のAちゃんか」

「うわさ？」

五「……うっかり君の話をしちまってな」

降「五十嵐はこんな怖い顔してるから、子供に怖がられることの方が多いんだ。なのにAちゃんに怖がられたのは最初だけだったって嬉しそうに話すから気になっててね」

五「…余計なことばかり話すな、降谷」

降「いいじゃないか別に。Aちゃんなら話してまずい相手でもないだろ？」

へー…健吾さんと降谷さん普通に仲良さそうに話してる。警察学校時代の同級生とか、そんな関係なんだろうか。

…私が怖がらなかったこと、喜んでくれてたんだなあ。最初怖がってたのもバレてたけど。