あなたに求められている私。２ ページ18
.
さっきまで端末を操作していた指が、
私の首の後ろに掛かって、
そのままぐい、と引き寄せられる。
.
抵抗を見せる必要はない。
そのまま力に従っていたら、当たり前のように唇が触れた。
お風呂に入った後だから、
少し暖かくて、甘い匂いがする。
.
「いい子にはご褒美あげないとなあ、」
「…」
.
その先は、なんとなく想像ができた。
私にとっての"ご褒美"が、彼の中で"そういうこと"だと認識されている事実が、
意識が遠のくほど苦痛だった。
.
その暖かい唇で、他の女の名前を紡がず、私の名前だけを呼んでくれたら。
その大きな掌で、私の頬だけを撫でてくれたら。
あなたが、私だけを愛してくれたら。
.
それが私にとって一番の望みで、一番の"ご褒美"なのに、
彼はそれを知らない、きっと、興味すらない。
.
甘んじて、その唇を受け入れる。
拒否したら、私の存在意義が失われてしまう、
身体を開かないお人形なんて、彼にとって無意味だ。
.
「さくらいさん」
「ん？なに？」
.
キスの合間に、名前を呼んでみる。
今は、いくらか機嫌がよさそうだった、
キスの途中で話しかけても苛立った様子を見せない。
.
「すきです」
.
私の、精一杯の真実だった。
いつだって、私はあなたのことが好きで、
愛されたいと思っていて、だけをあなたは私のことが好きじゃない。
.
私に優しくするのも、それでいていつだって不機嫌なのも、
全ては私を使ったゲームでしかないからで、
だから、心にもないことを甘い声で囁けるんだ。
.
「…可愛いな、Aは」
「、」
.
私が送った真実を、彼は嘘で跳ね返した。
可愛い、は裏切りの言葉だ、
私を、あざ笑う言葉。
.
俺もだよ、と言ってくれたら
私はもう、何もいらないのに。
そんな夢すら、彼は見させてくれない。
.
「ああ、手が冷たいな、」
.
さっきまで水仕事をしていた私の手を取って、
彼が温めるようにそれをぎゅうと握りしめる。
.
「あったかいです」
.
ふにゃりと、笑う。
心に反することが、いとも簡単にできてしまうのは
彼が望むものが、分かってしまうからだ。
.
私を見つめる目が、
嬉しそうに、そして楽しそうに揺れたのをぼんやりと見ながら、
ああ、心はこうやって壊れていくんだろうな、と
そんなことを思っていた。
.
あなたには関係のない一日だから。→←あなたに求められている私。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1574人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
Sho.S* WARM EMPEROR 2 -The World of Flower- Sho.S* COLD EMPEROR 2 -The World of Ice- いつも君を見てる２[A]完結もっと見る
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
