100万回生きた俺。【ヒロアカ】 (ページ4)

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最期の幕開けページ4

長身で全身黒い服装の男が、隣を歩く。

家から連れられて、まだ一言も会話していない。

春風が心地よい4月の終盤。俺は父親の転勤によって転校するらしいのだった。

元ヴィランが、今はヒーロー科の高校生をやっている。なんの笑い話にもならん。

せいぜい酒の席の魚と言ったところか。

相「…担任の相澤消太だ。よろしくね。」

低い声で、怠そうに自己紹介を始めた。

俺も、挨拶したほうがいいだろうか。

『……逢坂Aです。よろしくお願いします。』

突然に始まった断片的な人生に、最初はついていくのが大変だった。

ちょうど第2回目の人生では、状況が読めなくてパニックだった。

第100万回目の人生の幕を開けた今となっては、そんな初々しさもなくなった。

『あの、実は…1つ聞きたいことがあって…。』

相「なんだ？」

『俺の個性って…何でしたか？』

相「・・・記憶喪失か？」

『ベッドから落ちて、頭打ったんで…ちょっと記憶がぼや～っとしてまして。』

相「・・・病院に寄ったほうがいいか？」

『あ、大丈夫です！
…時間が経てば治りますから。』

こんなやりとりも、随分と手慣れたものだ。

ヒーローとしての人生は、今回が初めて。いくら慣れていても、少しは慎重に過ごすべきだ。

相澤先生は、俺の歩くスピードに合わせて進む。

この人も、きっとヒーローなのだろう。

俺はヒーローというとオールマイトしか知らない。

相「はぁ～(溜))
お前の個性は“万斛の涙(ばんこくのなみだ)”って言ってな、流した多量の涙で治癒をする個性だ。水分補給を欠かすと脱水になる。止め方は…恋人とのキスだと書いてある。
思い出したか？」

相澤先生は呆れながらも、教えてくれた。俺についての資料を見ながら、端的に答える。

俺は自分の個性を把握して、嫌気がさした。

オールマイトの言葉通りの個性だ。まるで、俺への嫌がらせのようだった。

Cry for someone.(誰かのために涙を流せ。)
Know a love.(愛を知れ。)

最悪だ。涙って何だよ…。ってか、恋人なんて居ない。

いや、そもそも簡単には泣けないだろう。

俺は100万人を葬った重罪人だぞ。

今さら人の命がいくつ無くなったところで、何を思うわけでもない。

戦闘系とかサポート系とか、それ以前の問題だ。

『…俺、よく試験に受かりましたね。』

相「は？…本当に大丈夫か？」

人を殺めた奴に、人を癒やすことが出来ようか…いや出来まいよ。