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xx＿22 ページ29
「連れて行く。俺が連れて帰る。だから来て、こっちに」
声が震えている。
まゆは怖いんだ。
今この状況を恐れている。
それなのに、わたしのためにここまで来てくれたんだ。
わたしは今すぐ駆け寄ってまゆを抱きしめてあげたかったけれど、それはもうわたしの役目じゃない。
誰か、ふさわしい人がきっと他にいるから。
それに、わたしはもうひとりじゃない。
この校舎と心中するつもりでここを選んだ。
だから、まゆは安心して帰っていいんだよ。
「ごめん」
「謝ってほしいわけじゃない！Aが本当に大切だから、俺は………！」
まゆらしくない感情的な言葉に、思わず胸が締め付けられるような心地がした。
「帰って、わたしはどうすればいいの？忘れたいことは一生、消えないんだよ。纏わりついて離れない、一生」
「じゃあ、一生かけて、俺が助け続けるよ」
一生かけて？
「Aが少しでも、息がしやすくなるなら、何でもする。たとえ忘れられなくても………」
切実で真っ直ぐな言葉が、まるでわたしの心の奥底を照らし出しているみたい。
苦しいくらい、眩しい。
「だから、帰ろう。一緒に」
心の靄が晴れるような、見えなかった道が現れるような………
「いいの？ほんとうに、一緒にいてくれる？」
「約束する。だから、こっちに戻っておいで」
わたしは溢れる涙を拭って、そして＿＿＿＿＿＿
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作者名：芳野 | 作成日時：2023年3月31日 23時
