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「君は、フィットネア子爵のご息女だね？」
『……はい。申し遅れました、A・フィットネアでございます』
「うん、子爵には僕からも重々説明をしよう。だから安心してくれ」
『はい、感謝いたします』
真に有難いことに、殿下には顔も名前も出身も、晴れて覚えがめでたくなってしまったという訳だ。
「A嬢、君にやって欲しいのはつまるところ、竜王の"世話係"だ。"竜の間"へ通って、出来るだけ多く竜たちと交流を図って欲しい」
『はい』
「その辺りの詳しいことは、グルッペン殿や村の民たちが教えてくれるだろう」
「……えぇ。A様の生活および安全は、我々が責任をもって保証いたしますよ」
『はい、よろしくお願いいたします』
「彼女は王都で過ごす聡明なご令嬢だ。出来るだけ不便がないように、僕からもお願いするよ」
「勿論、我々に出来ることでしたら全力で」
『……』
零れそうになる溜め息を押し殺して、キリキリと痛みを訴えてきた胃に知らんぷりをする。
私をダシにして、そういがみ合ってくれるな全く。
双方が笑みを湛えている？ 向かい合って、丁寧な口調で意見を重ね合わせている？
『(あー……今すぐ帰りたい)』
実際にこの位置に立たされたら、その実のところが否が応にも見えてくる。
この二人はやはり、最初から最後まで、本当の意味で和解することはないらしい。
つまり殿下は王族として、竜の存在が国にとってどうにか利益になるように動いているのだ。
本心を聞いた訳ではないので確実とはいえないが、きっと私が何らかの良い成果を果たせば、彼の思惑は達成される。
だから殿下は、私を隣に座らせた。
"竜王の世話係"たる私が、他でもない王都側の人間であることを示すために。
竜王ではなく――"竜王を味方にした人間"を引き込むために。
「細かな連絡は王宮の鳩を使うし、月に一度は実際に遣いもやるつもりだ。もし何か必要なものがあれば、そのときにでも伝えてくれ」
『かしこまりました』
「さて。まだ不安は残るだろうが、僕もあと一日はここに居るからね。何か意見があればいつでも聞くよ」
――何せ、これは国にとっても初めての事例だ。
殿下はそう穏やかに吐く一方で、有無を言わさぬ光をはらんだ瞳を細め、こちらを覗き込んだ。
曖昧に微笑んでみせるのが、今の私の精一杯だった。
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感情末期 - コメント失礼しますー!巡回いってきます!!大好きです!!いってきます! (2021年10月5日 22時) (
レス) id: c7b86b77aa (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 蓮さん» コメントありがとうございます。頑張って組み込んだコメディ部分、ウケたようで嬉しいです(笑) 応援ありがとうございます。 (2020年5月21日 2時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - コメント失礼します！ふにんきのところ笑っいました。更新頑張ってください！応援してます！ (2020年5月21日 0時) (レス) id: a5a3967b27 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 櫻華さん» コメントありがとうございます。これからもご満足いただける作品になるよう頑張ります！このご時世なので、櫻華さんも重々ご自愛くださいね。 (2020年5月20日 22時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
櫻華(プロフ) - 初コメ失礼します！リアリティのあるお話で、とてもハマりました！お身体に気をつけて、これからも更新頑張ってください！ (2020年5月20日 16時) (レス) id: e0d01a51ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月24日 1時
