55#高貴な催し ページ21
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憂鬱な予定ほど、迫りくるのは早い。
滅多に乗ることのない馬車に揺られながら、Aは何度目とも知れない溜め息を吐く。
着いた先は、王都の北側ほぼ半分を埋める立派な城だった。王都に暮らす民の中でも、実際にこの中に踏み入れるのは限られた人だけ。
その門を、彼女らを乗せた馬車は難なく通り越す。
パーティーの会場は中庭だった。よく聞く夜会とは違い、日中に、屋外で行われる特殊な催し。
参加者たちは皆煌びやかな正装を纏い、ご夫人方は日傘を差したりもしている。Aも日除けとしてストールを肩にかけていた。
着いてすぐに、アリサとハンナは慣れたように挨拶周りを始めた。
毎年やっているだけあって、流石板についている。Aはその後ろを着いていって、ただ微笑んでいればいいだけ。
建前を存分に着飾った言葉を耳に入れながら、早く終わらないかなぁ、と不真面目にも考えていた。
そして、どうやらあらかた流れを終えたようだと思ったとき、A達に近付く人影があった。
アリサは、げ、と顔をしかめる。
「本日はご登城、感謝いたします。して、A・フィリアス殿は」
『……はい、ここに』
現れたのは、王宮お抱えの調査団を名乗る男だった。やや強面で無表情な男だが、Aも何度か顔を合わせたことがある。
ただ、名前はややこしくて覚えていない。調査団の中でもお偉いさんだということは分かるのだが。
そしておそらく、今日Aを指名したのも彼であろう。
「こんな場で恐縮ではありますが、いくつかご質問させて頂いても？」
『構いませんよ』
随分
元より、彼女は今日このために来てやったといっても過言ではないので、断るはずもないが。
「先日提出いただいた報告書のことで。出現場所は"天満の泉"、木の姿をした魔物だったというのは？」
『えぇ、間違いありません』
聞かれるのは、報告に上げたものを確認するような内容ばかりだ。補足するように細かく質問をされ、Aは最低限の言葉で返す。
何せこんな高貴な場はあまり慣れていない。いつボロが出てしまうか、内心ドキドキなのである。
「採集した魔石も一緒に提出していただいておりますが、これの魔性に心当たりは？」
流れるように問いかけられたものだったが、彼の目がここで一層鋭くなったのには気が付いた。
この男が面倒臭いのは、"これ"だ。
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江之子(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。頑張ります！これからもお楽しみください。 (2020年7月13日 16時) (
レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 藻塩。さん» コメントありがとうございます。気に入ってもらえる展開でしたか！作者も好きです、書くときちょっと辛くなりましたが…(笑) (2020年7月13日 16時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - コメント失礼致します。とても面白く読ませて頂いています。これからも更新頑張って下さい。 (2020年7月12日 19時) (レス) id: 8cc228e6cc (このIDを非表示/違反報告)
藻塩。(プロフ) - 江之子さん» コメ失礼します、すんごく展開が好きです…！これからも無理しないように頑張ってください！ (2020年7月12日 14時) (レス) id: 7b5f2afcc4 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 菜の葉さん» コメントありがとうございます。登場人物たちに感情移入してもらえるとは、この上ない褒め言葉です…！頑張ります。 (2020年7月11日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
