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『は、はぁ……あの』
「ロボロなんかには勿体ない！ ね！」
――ズイ。
『ちょ、とチーノさ』
「アイツより、俺のほうがカッコいいですよね？」
――ズズイ。
『わ、ち、近』
「ね、ね、Aさん」
チーノは離した片手で眼鏡を押し上げ、その橙に光る瞳でAを真っ直ぐ射抜いた。
分厚いレンズが除かれたそこに、Aの視線は集中する。
「――俺にしときません？」
『……！』
にぃ、と細められた橙に映るAは、しばし黙り込んで。
そして表情を変えることなく、息を吸った。
『――ごめんなさい、ロボロさんの顔がこの上なく好みなんで』
告げられた答えに、チーノは目を見開く。
やがて。
「……ぶっ」
彼は、吹き出した。
「あっはははははっ！！ 傑作！ いやぁまじですげぇ！！ いひひ――いでぇ！？」
「趣味悪い、やめな」
再び小突かれ――というより、完全に拳骨を喰らったチーノ。やはり姉は強い。
「ごめんねA。こいつ、《暗示》もちなの」
『……えぇー』
《暗示》。
それが事実であれ嘘であれ、相手を強引に納得させてしまうという《精神》魔法の一種である。
「ほんま、聞いてた通りなんすね！ この距離で引っ掛からんかったの、オスマンさん以来ですもん」
「うっさいこの詐欺師が」
つまりこの男は初対面のAを相手に、問答無用で《暗示》をかけていた訳である。それがただ噂を確かめるためだけなんだったとしたら、まさに趣味が悪いよりほかないが。
苦い顔を浮かべるAに、ようやっと彼は謝罪を述べた。
「でも、綺麗なのは本当ですよ！ じゃあ早速、あいつに自慢しなきゃなんないんで！」
じゃ、と片手を上げて、チーノはすたこらと"フィリアス"のホームを出て行ってしまった。
残されたこちらとしては、まるでつむじ風が吹き荒れたあとのような心地で。
「ねぇA……誰の顔が、この上なく好みですって？」
『……あ』
――やば。
深く考えずに放った自分の発言に、少しだけ後悔するのであった。
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江之子(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。頑張ります！これからもお楽しみください。 (2020年7月13日 16時) (
レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 藻塩。さん» コメントありがとうございます。気に入ってもらえる展開でしたか！作者も好きです、書くときちょっと辛くなりましたが…(笑) (2020年7月13日 16時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - コメント失礼致します。とても面白く読ませて頂いています。これからも更新頑張って下さい。 (2020年7月12日 19時) (レス) id: 8cc228e6cc (このIDを非表示/違反報告)
藻塩。(プロフ) - 江之子さん» コメ失礼します、すんごく展開が好きです…！これからも無理しないように頑張ってください！ (2020年7月12日 14時) (レス) id: 7b5f2afcc4 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 菜の葉さん» コメントありがとうございます。登場人物たちに感情移入してもらえるとは、この上ない褒め言葉です…！頑張ります。 (2020年7月11日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
