50#本当の過去 ページ1
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Aは、冒険者とは関係のない、優しい両親のもとに生まれた子だった。
五歳の頃。
至って普通の、しかし幸せな彼女の生活が転機を迎えるのが、その年だ。
薬の調合を生業とする両親に連れられて、Aは"ウロの洞窟"を訪れた。言わずもがな、イリウスの花を調達するためだ。
五歳の少女を連れるには少々危険な場所かもしれないが、彼女にも自分たちの仕事を知ってもらおうとした両親の計らいだった。
『ここで、お花を摘むの？』
両親にそれぞれの手を握られて、Aの瞳がくるりと仰ぐ。
尋ねられて、母親はくすりと微笑んで頷いた。
「そうよ、青いお花よ。Aも手伝ってくれる？」
『うん！』
「この辺りだな。……よし、じゃあA、これをしっかり持って、父さん達の手元を照らしてくれ」
『えー、照らすだけぇ？』
「はは、Aにはまだ、この花は早いかなぁ」
意地悪を言うように笑う父親に、Aは唇を尖らせる。隣の母親も、もう、と笑いながら父親を宥めていた。
仕方なく、渡されたカンテラを両手で持ち、両親の手元を照らすことに努めた。
「A、父さん達の側を離れたら駄目だぞ。この奥は怖いところだからな」
『……うん、分かってるよ』
両親の手が選びとる青い花は、街でもあまり見かけない色合いだ。暗闇の中で光に照らされて、また幻想的な光景である。
Aはその光景にじっくりと見入っていて、父親の忠告は返事一つで聞き流していた。
『ねぇねぇ、わたしも摘んでみたい！ 一つだけ、いいでしょ？』
「分かった分かった。じゃあこれ、摘んでごらん」
父親が指し示した青い花に手を伸ばす。両親がやっていたのを見様見真似で、摘まんだ指に力を入れた。
二人が見守る中、Aの手には青い花が一輪摘み上げられた。
「上手じゃない、A」
「やるなぁ、流石俺の娘だ」
『……んふふ』
手放しに褒められて、Aは柔らかいほっぺをさらに緩める。愛娘の可愛らしい表情に、両親も顔を見合わせて笑った。
そして嬉しそうに花を見つめるAは、両親の肩越しにふと、見慣れないものを見つけた。
『……お父さん、あれなに？』
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江之子(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。頑張ります！これからもお楽しみください。 (2020年7月13日 16時) (
レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 藻塩。さん» コメントありがとうございます。気に入ってもらえる展開でしたか！作者も好きです、書くときちょっと辛くなりましたが…(笑) (2020年7月13日 16時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - コメント失礼致します。とても面白く読ませて頂いています。これからも更新頑張って下さい。 (2020年7月12日 19時) (レス) id: 8cc228e6cc (このIDを非表示/違反報告)
藻塩。(プロフ) - 江之子さん» コメ失礼します、すんごく展開が好きです…！これからも無理しないように頑張ってください！ (2020年7月12日 14時) (レス) id: 7b5f2afcc4 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 菜の葉さん» コメントありがとうございます。登場人物たちに感情移入してもらえるとは、この上ない褒め言葉です…！頑張ります。 (2020年7月11日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
