▼ ページ30
.
「なるほどなぁ」
「じゃあ、なんでこれを？」
『使えるから』
「んん？」
Aの話の流れの波についていけず混乱する二人に、Aはごめんごめんと謝りつつ、説明を続ける。
『アルビラットはね、普段は大人しいんだけど、こっちが手を出そうとすると、急に牙を剥くことがあるでしょ？』
どこに隠していたんだ、と驚くくらい、鋭利な牙とおぞましい形相。油断したこちらの隙を突いて怪我を負わせること数知れず。
そこに気を付けましょうね。それが、駆除する冒険者側の暗黙の了解だ。二人も思い当る節があったのか、しきりに頷いている。
『だから、普通に考えたら、それが魔性なんだよ。急に牙を剥く、これがね』
「……なるほど」
「なんかあんまイメージ湧かんけど、でも確証はないんとちゃうん？」
『ごめんけど、確証はない。でも、確信はある』
「ひひ、えらい自信やな」
ゾムは当事者ながらさほど反対する気もないのか、独特な笑い声を零す。
反対にショッピは、いまだに難しい顔をして考え込んでいた。これはおそらく反対の意思があるのではなく、必死に彼女の言い分を理解しようとしているのだ。
そしてAはそんな彼を、決して置いてけぼりにはしなかった。
『この魔石はねショッピ君。普通だったら皆処分しちゃうでしょう？ どんな効果があるのか分かんないし、使えたもんじゃないから』
「まぁ、はい」
『でもね、どんな魔石でも、きっと確たる魔性があって、きっと何かの役に立つ。私はそう思うんだ。今回はこの魔石を証明する』
「……それで、この魔性の名前は？」
『え、考えてなかった。そうだなぁ、じゃあ"牙を剥く"で、《
「そのままっすね」
『うるさいなぁ』
「ええやん、それにしよ」
どこから持ってきたのか、いつの間にか椅子に腰かけていたゾムが、ポンと膝をひとつ叩く。
その表情はひどく楽しそうで、ひひひ、と歯を見せて笑うと、Aに大きく頷いた。
「やからまとめると、油断させてから一気に噛みつくんやろ。面白そうやん、そんなん出来たら」
存外、ゾムのほうが感覚的に掴めているらしい。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 84人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：江之子
| 作成日時：2020年3月25日 23時
