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『コネシマ、なんか、逃げろって――』

「あかん」

『――え』

 掴まれた腕が、さらにきつくなる。教室から一人、また一人と人が減っていく中で、彼はそれには従わなかった。
ぐいっと引っ張られ、引っ掛けた足が椅子を蹴り倒してしまう。それには脇目もふらず、コネシマはベランダ側の窓に歩み寄った。

 カーテンを全て閉め外界を遮断したと思ったら、今度は後ろのドアからベランダへと出る。
窓もカーテンもきっちりと閉め、どうやら彼が遮断したかったのは教室側だったらしい。意図が分からず彼を見上げる。

 悲鳴はそれでも、小さく、ひっきりなしに続いていた。

『……ねぇ、皆どっか行っちゃったけど、私たちだけいいの……?』

「……」

 コネシマは私の腕をとったまま、ずるずると壁に寄りかかって崩折(くずお)れた。
引っ張られるように傍らに膝をついて分かった。……彼は、ひどく震えている。

 項垂れて膝に額を押し当てたそこで、コネシマはぶつぶつと何事かを独り言ちていた。何が起こっているのか、私にはさっぱり分からない。
何度か呼びかけたけれどまともな返事がこないため、大人しく彼が落ち着くのを待つことにする。

「――A」

『うん……?』

「俺の言うこと、聞いてくれ。頼む」

『え?』

「……」

 しかし、待てども次に続く言葉はなかった。
そんなしおらしいの、コネシマらしくないじゃん。揶揄いの言葉は口から出ず、気付けば代わりに、分かった、と頷いていた。


「――……俺の、番なんか」


『え……?』

 コネシマはゆっくりと頭をもたげる。横にいる私とは視線を合わせず、どこか一点を見つめていた。
その先を追うと、ベランダの隙間の向こうに校庭が見えた。同じクラスだろうか、何人かの生徒が走っていくのが見てとれる。

 そして次に飛び込んできた光景に、私は自分の目を疑った。
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ムツえ - 10話だけなのに夢中になってしまった…!あ、どうも4周目です() (2021年9月11日 17時) (レス) id: dc97c94e28 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - どうも二週目です。一週目はあんまり理解せずに読んでしまって、面白かったという感想しか浮かんでこんかったけどでも二週目で話をしっかり読み理解しました。主さんの話の作り込みがすごくわかりました。色々と伏線かな?が貼られててそれを最後に回収する。最高です (2021年3月8日 0時) (レス) id: 53cc08d6c4 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - ゆうなさん» コメントありがとうございます。楽しんで頂けたのが伝わりました(笑) 良かったです! (2021年3月6日 3時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - え、えぇ!!!?!?!なんか、なんか!え、!?凄いです!ほんとにまるで自分がその場で体験しているかのような感覚がして、ドキドガが止まりませんでした!!話の勢いがすごいのにでも文章はとても読みやすく面白い構成になっていて凄く良かったです!w語彙力が (2021年3月3日 1時) (レス) id: 53cc08d6c4 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - アキさん» コメントありがとうございます。作者の期待通りの反応で嬉しいです!笑 (2021年3月2日 21時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:江之子 | 作成日時:2021年3月1日 22時

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