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失礼します、と落ち着いた控えめな声が聞こえてきた。
ドアに目をやると、見慣れたはずの紫色のヘルメットを被っていない、後輩の頭が覗いた。
彼は部屋の主ではないのにここにいた自分へと視線を向けてから、改めて部屋の主へとそれを流す。
「トントンさん、これ、頼まれてた件っす」
「ん、おう。ご苦労さん」
短く用件を言い置いて、部屋の主――トントンに紙束を渡した後、用は済んだと言いたげにさっさと踵を返す背中を呼び止める。
振り返った彼はひどく不満そうな表情をしていた。全く、分かり易いにも程があんで。
「何やの、今から上空デートかいな」
「……。そうっすけど、何か」
だから早く用件を言え。と言葉ではなく表情で催促する様子に、思わずとも苦笑が洩れる。
「すまんすまん、行ってええよ」
「そっすか、じゃ」
何の躊躇いもなくドアの向こうへ消えていったのには、多少なりとも胸が痛んだ。
あれ、少し前までは兄さん、なんて呼んで慕ってくれていたはずなのに。
「……はー、浮かれとんのぉ」
閉じてしまったドアを眺めつつ、トントンでさえそう零す。こういった沙汰にまだ不慣れである彼がこう言うのだから、その具合も分かって頂けるだろう。
そりゃあ、と言葉を繋げれば、机上を向いた視線が再びこちらへと引き上げられた。
「やっと手に入れたんやから、浮かれもするやろ」
「……そんなもんか？」
彼は、至極不思議そうに首を傾げていた。
それは何も彼自身が疎いとかそれだけではなく、あの男がそう言った様を見せることに、まだ違和感があるからだと思う。
だが、中身を知ってしまった自分はただ、笑ってしまうばかりだった。
「なぁ、トンち」
「あ？」
「もし、もしやで。一目惚れしてしまった娘が居るとするやんか」
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クロエ(プロフ) - ありがとうございます！！！！！！ (10月8日 4時) (
レス) id: 3d0234bb1d (このIDを非表示/違反報告)
クロエ(プロフ) - どうしてこの話がまだまだ伸びないのか疑問すぎる！！なんだか分厚い辞典でこの小説欲しいくらいなんか好きです！！！！！！最初の出会いからこの話の終わりまでずっとニマニマしちゃって覚醒の時なんかボロボロ泣いちゃいました！！めっちゃいい話を書いてくれて (10月8日 4時) (レス) @page33 id: 3d0234bb1d (このIDを非表示/違反報告)
妖々梅雨里(プロフ) - 最初から、最後まで。主人公の感情にこちらも身を乗り出してしまうかと思うくらい入り込めました。最後にはつい感極まって泣いてしまいました。素晴らしい作品をありがとうございます!!! (2021年12月25日 23時) (レス) id: f5b2ce54f6 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - とても素敵な物語でした…語彙が乏しいことにここまで後悔する日が来ようとは…!!1冊の小説を読んだ気分です。本当に本当に素敵な物語をありがとうございました！！ (2021年4月6日 23時) (レス) id: 31e2beb33a (このIDを非表示/違反報告)
つ旦(プロフ) - ここ最近で一番作品の世界にのめり込んでしまいました。距離感や環境に心温まり、ストーリーを読むにつれて心満たされていく感覚が最高でした。素敵な作品を書いてくださり本当にありがとうございます。 (2021年2月1日 17時) (レス) id: 4806c4a672 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年6月25日 2時
