▼ ページ21
.
四人は迷うことなく森の奥へと足を進めていく。
運の良いことに、問答無用で襲い掛かってくる魔物は今日はいなかった。この森に棲む魔物は、こちらが手を出さない内は穏健なものが七割、敵意の強い凶暴なものが三割といった感じだ。
「そろそろだよ」
ドリーの言葉に、一同は緊張を滲ませて息を潜めた。感覚で言うと、森のほぼ中心地まで来ていると思う。
ふと歩みを止めて木々の間へと目線を飛ばしたドリーは、こちらを振り返ってついてくるように合図すると、そのまま道を外れていった。Aたち他のメンバーも、何も言わずその背中を追う。
道を外れて木々生い茂る中に足を踏み入れるということは、それだけ魔物の縄張りに接近する危険があるということだ。
四人は周囲を警戒したまま、目的地へと歩を進める。大木が陽の光を遮って、薄暗い森の中。
「――いた」
先頭のドリーが、声を潜めて短く言った。どうやら、目的の魔物を発見したらしい。
視線を追うと――確かに。
少し開けた場所があって、そこは周りとは少々異質な岩場になっていた。ゴツゴツといくつもの岩がそびえる中、"それ"はくすんだ紅色を主張している。
"アドウィルトン"。
ベージュの毛の体躯に赤い
それが今回狙う獲物であった。ちなみにグィズの森でよく見られる、《地》属性の"ウィルトン"の亜種でもある。
なるほど、とAは納得した。あれは確かにすばしっこそうだ。
あの岩場の辺りを住処にしているのか、どうやら先日見つけたアドウィルトンもこの辺りだったらしい。
三人はAの反応を窺う。
その視線を感じつつ、Aは無言で顎をクイと上げた。出撃の合図である。
彼女らは一斉にお互いに距離を取ると、それぞれ違う方向から獲物を狙うような陣形をつくる。
視界と足場の悪い森の中、ほとんど音も立てずにそれをやってのけるのだから、流石"フィリアス"のメンバーといったところか。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 144人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
江之子(プロフ) - チトセさん» コメントありがとうございます。私も、いつまで経っても魔法の世界が好きなんですよねぇ。是非とも一緒に楽しんでください！ (2020年4月2日 23時) (
レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
チトセ(プロフ) - もちろん待ってました！この設定が好きだったので、更新ない間もこの世界を歩くことを妄想したり…。帰ってきて嬉しいです！ (2020年4月1日 11時) (レス) id: e1c495790d (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - さよさん» コメントありがとうございます。何度もとは嬉しい…。期待に沿えるよう精進します！ (2020年3月25日 22時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 。。。さん» コメントありがとうございます。旧作から来ていただけたようで、何年もお待たせして恐縮ですが、また気長にお付き合いください！ (2020年3月25日 22時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
さよ(プロフ) - 旧作何度も読み返すくらい好きだったので、新設を作ってくださってとても嬉しいです…！！これからの更新とても楽しみにしています。 (2020年3月25日 11時) (レス) id: 6370bc6004 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：江之子
| 作成日時：2020年3月24日 21時
