◆至適温度ー続き ページ1
チャイムの音で目が覚めたのは、時計の針が０時に差しかかろうとしたときだった。
こんな真夜中に誰……。
まさか、不審者？
怖々とインターフォンのモニターを確認すれば、そこにはスーツ姿の結弦が立っていた。
礼儀を重んじる結弦が連絡もなしに来るなんて珍しい。と、手元のスマホを見ると、結弦から２１時半頃に“今、東京。最終便で仙台に戻るから、マンションに寄る”とメッセージが入っていた。
しかも、その後２３時に“もうすぐ着く”と続き、１０分前に“無視するな”……。
無視なんかしていない。眠っていただけだし。
心の中で言い訳していると、２回連続でチャイムが鳴った。慌てて玄関に向かい、ロックを外し、そっとドアを開ける。
見上げた先に仏頂面の結弦。
「なんだ、いるんじゃん」
「ご、ごめんね。６連勤で疲れ果てていたから、今日は早く寝たの。メッセージに気づかなかった」
あきらかにムッとしている結弦に先手を打って謝る。
「ふーん……。ま、いいけど」
ちっとも納得していない顔つきのまま、結弦は靴を脱ぐと、私の横を通り過ぎた。
ふわっと漂う、柑橘系の香りに懐かしさを感じる。
そう、懐かしい。
ずっと会っていなかったから。
プロになってスーツを着る機会が増えた結弦の着こなしには一分の隙もなく、髪もきっちりセットされている。
私の知らない、プロアスリートの結弦。
かっこいいな。
どうして、この人はこんなに素敵なんだろう。ズルいよ。
一方、私といえば、すっぴんで髪はぼっさ、シャツにスウェット。眠っていたから仕方ないけど……好きな人に久しぶりに会うなら、もう少しマシな恰好をしていたかった。
これが最後になるなら、なおさら。
私がそんなことを考えているうちに、結弦はさっさとへ部屋に入り、キョロキョロと見回してなぜか首を傾げた。
「……変わってない」
そして、ボソッと呟く。
変わっていないって、部屋のこと？
結弦が眺めているのは、ベッド横の壁一面に飾られた結弦のポスターやカード、チェストに置かれたグッズやプーさんたち、……と、ねこまさむね。
単独アイスショーのグッズが増えたぐらいで、特段変化はないはずだ。
どうして、結弦は不思議そうな顔をしているの？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 265人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エミル(プロフ) - ころねさん» ころねさん、ご無沙汰しています(^^ ; 長編も短編もちょこちょこ書いているのですが、羽生くんからの怒涛の情報や配信にのまれて、日が空いてしまいました。もうしばらくお待ちいただけると嬉しいです( *´꒳`* ) (7月16日 8時) (
レス) id: a72ef995e1 (このIDを非表示/違反報告)
ころね(プロフ) - エミルさんのお話のファンなので、どんな結末でも続きが読めたら嬉しいです♡よろしくお願いいたします！ (7月14日 16時) (レス) id: 800fd7d527 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - ころねさん» 実は展開を大幅に変更したので、どこに着地するか迷っています･･･。挽回せずに終わりとかもたまにはアリかなぁ。続きを更新できるよう頑張ります！ (5月19日 18時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
ころね(プロフ) - この状況から挽回出来るのでしょうか？！続きを楽しみに待ってます(^^) (5月18日 23時) (レス) id: 800fd7d527 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：エミル | 作成日時：2023年5月7日 21時
